中塚健一助手 一瞬先は…天国の姉に願う「愛馬の無事」

[ 2018年9月21日 05:30 ]

メイショウテッコンと神戸新聞杯、菊花賞に挑む中塚健一助手(撮影・平松さとし)
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 【競馬人生劇場・平松さとし】高橋義忠厩舎の中塚健一持ち乗り調教助手の父は園田競馬の調教師。姉と妹と共に育てられたが、幼少時は姉との仲がしっくりいかなかったという。

 「姉は空手や柔道をしていたので、口げんかでかなわないばかりか、力でも負かされてばかり。はっきり言って仲は悪かったです」

 しかし、牧場で働くようになると「少しずつ認めてくれたのか、けんかもなくなり気付くと仲良くなっていた」。04年7月15日に姉が26回目の誕生日を迎えた直後の同月24日。牧場で1頭の調教をつけ終えると、事務所に呼ばれた。「実家から電話が入っていて“すぐに帰って来い”と言われました」。帰宅すると姉の変わり果てた姿が待っていた。交通事故に巻き込まれ、帰らぬ人となっていたのだ。

 「顔は奇麗なままだったことが救いでした」。その後、遺品を整理していると、亡くなっていなければ行くはずだった海外旅行のスケジュール表が出てきた。「人間なんて“一瞬先にどうなっているか分からない”と痛感し、やりたいことはやれるうちにやろうと考えました」

 そこでかねて行きたいと思っていたアイルランドへ飛び、A・オブライエン厩舎で約1年働いた。帰国後は競馬学校を経て、09年3月から栗東トレセンへ。「13年9月からは現在の高橋厩舎で乗るようになりました」。そして出合った馬がメイショウテッコンだった。気性の難しい馬だが、気を損ねないよう接すると、徐々に指示に従うようになった。結果、7月ラジオNIKKEI賞(G3)を優勝。重賞初勝利を記録した。

 そんな同馬と共にこの秋は菊花賞に挑む。そして今週末の神戸新聞杯でそのための布石を打つ。“一瞬先にどうなっているか分からない”のは馬も同じ。中塚助手は「愛馬たちの無事を見守ってください」と天国の姉に手を合わせ、願うのだった。

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2018年9月21日のニュース