【凱旋門賞】クリンチャー、日本馬悲願Vへ宮本師「平常心で」

[ 2018年8月28日 05:30 ]

クリンチャーと宮本師
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 夏の終わりが近づき、秋のG1戦線の足音が聞こえてきた。国内だけでなく海外競馬も同じ。フランスで行われる凱旋門賞(10月7日、パリロンシャン)に日本馬が挑戦する。昨年の菊花賞2着馬クリンチャー(牡4=宮本)。前哨戦のG2フォワ賞(9月16日、同)をステップに日本馬の悲願へ挑む。コンビを組むのは海外競馬を知り尽くす武豊。最高の相棒での挑戦に、管理する宮本師が夢舞台に対する熱い思いを語ってくれた。

 ――凱旋門賞遠征プランを聞いたのはいつ?

 「すみれSを勝った後、前田会長(前田幸治オーナー)から“凱旋門賞に登録する”と聞きました。会長は少しでもチャンスがあれば、積極的にチャレンジしようという方ですからね」

 ――昨秋は国内に専念。

 「ダービーで13着と結果が出なかったので、残念ながら行けませんでした。結果的に時期尚早でした。ただ、菊花賞で2着。続く京都記念を勝ったことで、また話が出てきました。天皇賞・春でも3着に頑張ったので、レース後すぐに会長から“行くぞ!”と電話がありました」

 ――鞍上は武豊。

 「凱旋門賞の経験が豊富ですし、何より日本で一番うまいジョッキーですから、本当に心強いですね。オーナーもキズナで遠征されている。実は今回の馬主、騎手、調教師の中でG1を勝っていないのは僕だけなんです。みんなの力を借りて、何とかいい結果を…と思っています」

 ――クリンチャーのフランス適性は?

 「不良馬場の菊花賞が2着。重馬場の京都記念でもG1馬を倒していますから、重い芝は得意です。皐月賞では1分58秒1の速い時計で4着ですから、時計が速くても対応できるんですが、より適性があるのは重い芝ですね。普段はボーッとしている馬なので、輸送も心配ないでしょう」

 ――現地では人気薄(大手ブックメーカーのウィリアムヒルでは34倍)。

 「デビュー戦で大敗して、2戦目の未勝利を単勝最低人気(244・8倍)で勝った馬。次のすみれSを勝った時も5番人気でした。いい意味で“裏切る”のは得意な馬なんですよ。下馬評は低くても、陣営としては期待しています」

 ――厩舎の海外遠征は初めて。

 「実は一度チャンスがあったんです。ブレイクアセオリーという岡田繁幸さんの馬(名義はビッグレッドファーム)で、ガリレオの子供でした。オーストラリアのメルボルンCに行くプランがあったのですが、屈腱炎で引退に追い込まれたんです。この馬もクリンチャーと同じ長谷川(助手)の担当馬でした。そういう意味では、厩舎としても“今回こそは!”という思いです」

 ――調教助手時代には、キョウトシチーでドバイワールドCに参戦(98年)。

 「懐かしいですね。何とか賞金のある6着までに入りたいと思っていたんですが、きっちり6着でした。今から振り返っても、力は出せたと思っています」

 ――当時の経験で今に生きることは?

 「外国人には要求しないと駄目だということでしょうか。もう一つ、師匠の中尾先生(中尾謙太郎元調教師)には僕がやりやすい環境を整えていただきましたから、同じことを長谷川にしなければと思っています」

 ――凱旋門賞を現地で見るのは初めて?

 「実は(13年に)キズナが4着だった時、前田会長に招待していただいて、現地に応援に行ったんです。いつかはこの舞台に立ちたいと思いましたし、あれから5年、実際にチャンスが訪れるとは夢のようです。いい結果を出して、あの時の恩返しをしたいですね」

 ――22日に国内最終追い切りを終え、24日に出国。

 「牧場から帰厩して、順調に調整できた。状態は抜群。叩いた方が良くなるタイプだけど、前哨戦から力を出せると思う。フォワ賞の最終追い切りは(武)豊さんに感触をつかんでもらうつもりです」

 ――最後に応援しているファンにひと言。

 「頑張ろうとしすぎると空回りするので、何よりも“平常心”を忘れないようにしたいです。チーム一同、いい結果が出せるように頑張りますので、皆さんの応援をよろしくお願いいたします」

 ≪ゴール前攻防熱く≫今年4月に新装されたパリロンシャン競馬場。スタンドは全面改築されたが、コースは3〜4角奥に7Fスタート用の引き込み線が新設された以外、レイアウトに大きな変更点はない。ただ、最後の直線には新しい移動柵である「オープンストレッチ」を新設。従来の内ラチより、さらに6メートル内(開催によって変更あり)へと柵が移動し、その分、直線の幅が広がるシステム。旧ロンシャン競馬場は内枠有利とされたが、新しい直線ではゴール前の攻防で馬群が広がり、よりフェアな追い比べが可能なコースとなった。

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