“引退翻意”西田ミーティアで子供に勇姿を

[ 2018年6月15日 05:30 ]

 【競馬人生劇場・平松さとし】“引退”…西田雄一郎の頭をこの2文字がよぎったことがあった。16年の暮れ、レース中に不利を受けて落馬した時のことだ。

 「いつもなら腹が立つのに不思議とすがすがしい気持ちになりました」

 これは辞めどきか?と思った。

 当時の西田には不運が重なっていた。前年の秋には落馬で頸椎(けいつい)と胸椎を骨折。3カ月の休養後は勝ち鞍から見放された。さらに追い打ちをかけるように、当時まだ2歳だった子供を病が襲い、長期の入院生活。愛する我が子と別々の暮らしを余儀なくされた。そんな折、冒頭の落馬があった。

 高校を中退して騎手になるとデビュー年は同期の中で最多勝。2年目には早くもサクラエイコウオーで重賞の七夕賞を優勝。デビュー5年目には道交法違反に端を発し騎手免許返上。しかし、5年間の牧場生活を経て騎手に復帰した。そうまでして手に入れたジョッキー人生に自ら幕を下ろそうかと考えるほど、当時の彼は弱っていたのだ。

 そんな時、救世主が現れた。新潟の直線1000メートルで行われる邁進特別を制したラインミーティアだ。同馬のスピード能力にホレ込んだ西田は引退しようかと考えた気持ちを捨てコンビを組み続けアイビスサマーダッシュ(G3)を勝利。10年のケイティラブで優勝した同レース以来7年ぶりの重賞制覇を飾った。

 今週末の函館スプリントSに出走を予定していた同馬は、残念ながら回避となってしまったが「引退しないでよかった」と語る西田には、現在一つの楽しみがある。1年間の入院生活を送った後、退院した子供に、競馬で騎乗する姿を見てもらうことだ。ラインミーティアの復帰と西田パパの活躍に期待したい。(文中敬称略)

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2018年6月15日のニュース