【ヴィクトリアM】リス100点!“黒百合”開花の美しい姿勢

[ 2018年5月8日 05:30 ]

百花繚(りょう)乱の女王候補の中で達眼が捉えたのはリスグラシューの姿勢の変化
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 初夏の女王候補3頭が女ざかり花ざかり。鈴木康弘元調教師(74)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第13回ヴィクトリアマイル(13日、東京)ではリスグラシューに唯一の100点満点を付け、アエロリット、ミスパンテールにも95点と高評価した。達眼が捉えたのは初夏に咲く百合(ゆり)、芍薬(しゃくやく)、牡丹(ぼたん)を思い起こす容姿の変化だ。

 立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花…。美しい女性の姿勢を初夏の花にたとえた言葉です。しなやかで柔らかい茎葉の上に花が咲き誇る百合の姿は、なるほど優美に歩く女性の姿をイメージさせる。美しい姿勢は自信の表れと言いますが、背筋を伸ばした内面からあふれ出るような百合の美しさです。

 フランス語で「優美な百合」と命名されたリスグラシュー。4歳初夏を迎えて、姿勢が見違えるほど良くなった。昨年の秋華賞やエリザベス女王杯では担当スタッフが正面から右手を上げて前方へ集中するよう促しても、頭を低くして立っていた。ところが、今回は頭の位置が上がって、とても美しい姿勢になっています。当時の写真と比べれば一目瞭然でしょう。姿勢が良くなったことで内面からあふれ出る活気を感じるのです。自信に満ちた黒鹿毛の姿は息をのむほど美しい。背筋を伸ばしたクロユリのように…。

 心身一如と言いますが、姿勢の変化に合わせて体つきも成熟してきた。昨年のエリザベス女王杯時にはアバラが出るほど寂しく映った腹周りにフックラと余裕がある。繊細な牝馬だけに体のフックラさはとても大切です。もっと顕著な変化はトモ(後肢)。臀部(でんぶ)の筋肉量が明らかに増えた。細かった3歳春とは見違える成長ぶりです。このトモなら昨年のように後方からゆったり進まなくても、バランスを崩すことはないでしょう。

 筋肉の質は元々柔軟性に優れています。疲労がたまりづらく、しなやかな走りを可能にする筋肉。百合のしなやかで柔らかい茎葉のように…。質とともに筋肉量も増えた以上、注文は何もありません。このままの姿で当日のパドックを周回してほしい。歩く姿は百合の花…。牝馬として完成の域に入った4歳の初夏。淑女の芳醇(ほうじゅん)な香りを漂わせながら、馬名通りの「優美な百合」を開花させる季節です。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の74歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70〜72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94〜04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。

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2018年5月8日のニュース