【朝日杯FS】火を噴いタワー!!百戦錬磨の師も驚き

[ 2017年12月14日 05:30 ]

ルメールを背に併せで追いきるタワーオブロンドン(右)
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 2歳王者決定戦は藤沢和勢が上位独占!?「第69回朝日杯FS」の追い切りが13日、美浦、栗東トレセンで行われ、京王杯2歳S優勝のタワーオブロンドンが迫力満点のフットワークを披露。主戦・ルメールも仕上がりに揺るぎない手応えをつかんだ。

 坂路モニターを見つめる藤沢和師の表情が見る見るうちに緩んでいく。「凄いよな。バキューンだものな」。その視線の先ではタワーオブロンドンがすさまじい脚取りで急勾配を駆け上がった。3馬身先行したティソーナ(4歳1600万)を並ぶ間もなくかわしていく。鞍上・ルメールが手綱を押さえたままで半馬身先着。ラスト1Fは12秒1の瞬発力だ。「ちょっと速過ぎるんじゃないか?」。出迎えた厩舎スタッフの問いかけにルメールが紅潮した顔で答える。「これ以上遅くなんてできないよ。エンジンがフルパワーで火を噴いているんだ。桁違いの脚だった」。パートナーのティソーナに騎乗した杉原も驚いた顔で言葉を継いだ。「(ティソーナには)追い付かないと思ったのに…あり得ない脚です」

 昨年のサトノアレスに続く2歳王者の座を狙う藤沢和厩舎の秘蔵っ子。2連勝で迎える大一番にはその名の通り、ロンドン塔の頂に到達するような勢いがある。藤沢和師は「前々走は速い流れ、前走は緩い流れでも我慢できていた。若い馬なのに立派だよね。デビュー前からハミ受けの強いスピードホースだったが、ルメールが脚をためるレースを教えてくれた」と言う。初のマイル戦を見据えて、毎日の調教でも折り合い重視。「ゴール前はフルパワーでも、道中のコントロールが利いていた」とルメールは同師に報告した。

 祖母は21年前、藤沢和厩舎に所属していた“奇跡の馬”シンコウエルメス。デビュー直後の調教中に予後不良(安楽死やむなし)と判断される重度の骨折を負いながら、「何とか繁殖馬にして血を残したい」(同師)の訴えで難手術に踏み切った。英愛ダービー馬ジェネラスの半妹にあたる“奇跡の馬”は一命を取り留めて繁殖牝馬になり、その初子エルメスティアラが皐月賞馬ディーマジェスティを出産。5番子レイクトーヤは今春の仏G1優勝ソウベツを生む。11番子スノーパインから生まれたのがタワーオブロンドン。命をつないだ血統が定年まで残り4年のレジェンドトレーナーの下で開花した。代を巡った馬の恩返し。「(輪郭が)奇麗だったシンコウエルメスとは体つきが全然違うけど、スピードは受け継いでいるよね」。その岩肌のような後ろ姿を見つめる師の表情が再び緩んだ。

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2017年12月14日のニュース