【秋華賞】ディアドラ1冠!泥んこ馬場から新ヒロイン誕生

[ 2017年10月16日 05:30 ]

<秋華賞>C・ルメールを背にリスグラシュー(右)をかわすディアドラ(手前)
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 泥んこ馬場から生まれたのは新ヒロイン!!3歳牝馬の3冠最終戦「第22回秋華賞」は、雨&重馬場のコンディションが史上初なら、走破タイム2分00秒2は同レース史上3番目に遅い決着。タフで厳しい戦いの中、3番人気のディアドラがG1初制覇。管理する橋田満師(65)は10年ぶりのJRA・G1制覇。また、テン乗りのC・ルメール(38)は冷静な騎乗で今年G1・4勝目(通算14勝)、今年の牝馬G1は3Vとなった。

 冷たい雨が降りしきる淀のターフで、名門が復活を告げた。出遅れて後方待機のディアドラが長く、長く脚を使って差し切り。橋田厩舎は07年高松宮記念のスズカフェニックス以来、10年ぶりのG1制覇だ。いつもは沈着冷静な65歳の指揮官だが、祝福の輪に包まれると照れくさそうに笑みを浮かべた。

 「G1はご無沙汰でしたし、うれしかったです。ディアドラは瞬時に反応できないけど、他の馬より少し長めの脚が使えるので、残り100メートルぐらいでは前をかわせるな、と思いました」

 決して楽な競馬ではなかった。予期せぬ出遅れで後方から。ルメールは「もう、いいポジションは無理。馬に怒りました」と苦笑いで振り返る。ただ、幸いにも前半1000メートルが59秒1のハイペース。これでチャンスが出てきた。そして勝負の分かれ目は13番手で迎えた3コーナーだ。詰まることを覚悟の上で、ルメールは内へ。イチかバチかの賭けだった。

 「後ろ過ぎて、バックストレッチでは無理だと思ったぐらい。3コーナーで外を回すと厳しいと思ったので、内にトライしたんだ」

 ラチ沿いを進出して直線に向くと、前に1頭分の進路ができた。ならば、あとは追うだけだ。一頭、また一頭と抜き去り、残り50メートルで先頭へ。終わってみれば1馬身1/4差の完勝だ。ルメールは今年の牝馬G1・3勝目。初騎乗で大仕事を成し遂げた。

 苦難を乗り越えたのはレースだけじゃない。橋田厩舎にも厳しい時期が続いていた。11年まで16年連続で重賞を制した名門も、昨年は89年以来、27年ぶりの1桁勝利。今年1月には“冠名アドマイヤ”の近藤利一オーナーの所有馬が全て転厩する“事件”もあった。

 「一時は3分の1ぐらいの馬がいなくなったけど、うちの厩舎の武器はチームワーク。(攻め専の)村井助手と竹之下騎手を中心に、いろんなことが重なって、うまく厩舎が回ってきました」

 短期放牧を挟んでのいわゆる“10日競馬”が主流となる中、「時間をかけて馬をつくるのが厩舎のスタイル」と指揮官。ディアドラも7月から3カ月間、込山助手を中心に在厩で鍛えられた。カイバを増やしながら調教の負荷も強め、この日の馬体重は自己最高の490キロ。まさに究極仕上げでの、価値あるG1タイトル獲得だった。

 今後は状態を見ながら、古馬との対戦となるエリザベス女王杯(11月12日、京都)を視野。まだまだ進化を続ける新3歳女王が、再興した名門を引っ張っていく。

 ◆ディアドラ 父ハービンジャー 母ライツェント(母の父スペシャルウィーク)牝3歳 栗東・橋田厩舎所属 馬主・森田藤治氏 生産者・北海道安平町ノーザンファーム 戦績14戦5勝 総獲得賞金2億361万4000円。

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