【凱旋門賞】全陣営コメント エネイブル・ゴスデン師「素晴らしい状態」
[1]ザラック(ドゥロワイエデュプレ師)前哨戦の代わりとして9月5日にメゾンラフィット競馬場の芝2000メートルで3頭の併せ馬を行っている。今週の最終追い切りは火曜日にエーグル調教場の芝コース。この2週の動きは特に絶好で、状態は最高潮と言っていい。初距離だったサンクルー大賞で上手に走ってくれたので8月から凱旋門賞に向けて馬体を作り込んできた。抜け出してからソラを使うところがあるので追い切りでは最後まで後ろの馬に追い掛けさせて、まだレースが続くことを教え込んでいる。古馬となって成長したし、夏を越してさらに筋肉が付いた。この血統は燃えやすいが落ち着いて走ることが出来れば。ザルカヴァのクラスとは比べられないが、加速力は母譲りの非凡なものがある。馬場は乾きすぎない方が良いが、天気予報では日曜日は雨と聞いているので理想的な状態になりそう。この馬の最高のパフォーマンスを期待している。次走は3週間後の英チャンピオンSを視野。そしてそろそろ種牡馬として牧場に戻すことを考えないといけない。
[2]ドーハドリーム(ゴードン・レーシングマネージャー)サンクルー大賞で落馬したがこの馬に非はなかったし転倒によるダメージは幸いにもなかった。その後の2戦を見てもメンタル面への影響もなさそう。レースでは逃げ馬の直後を取りに行くような展開が理想。この馬はスタミナがあるので、前に言っても最後まで頑張れる。優勝候補とは見られていないが、安定して結果を出しているし、シャンティイではG2を勝っている。前走のドーヴィル大賞も良く走っているし、状態はさらに上向きなので、凱旋門賞でも見せ場を作ってくれるはず。5着以内に入れば満足。トップスピードではライバルに見劣るので柔らかい馬場が理想。
[3]ワンフットインヘブン(ドゥロワイエデュプレ師)今年は故障で休養が長かった。前走は足慣らしという競馬だったが、ベストより短い距離ながら良い走りを見せてくれたので安心している。スタミナが豊富で2400メートルが得意な馬。ただ今回は準備期間が短く乗り込み量は足りないかもしれない。馬体は大きくないがバランスの良い馬。昨年も6着だが度胸があるので大舞台向きのタイプ。レースは後方からとなるので、ペースが流れそうなことは歓迎。馬場についてはこの馬にとっては一切関係ない。少しでも良い状態で出せるように努力しているが、今年は相手も強いから優勝を狙うというより上位争いに加わることを目標にしている。
[4]ユリシーズ(スタウト師)英インターナショナルSはチャーチル、バーニーロイという強い3歳馬を相手に直線で待つ余裕があるほど素晴らしい走りを見せてくれた。直前の調教の動きには満足している。馬体もベスト体重でレーティング通りの能力を発揮できそう。3歳時もいい馬だったが、古馬になって本当に成長した。2000メートルで強いが、キングジョージを見てもらえば分かるように2400メートルも十分こなせる。エネイブルに勝つのは簡単ではないが、良馬場になればそれは差を縮める助けになる。直線勝負の馬なのでペースは流れてほしい。最大目標はBCターフで、そこへ向けても5週間の間隔はベストなので今回は出走を決めた。
[5]クロスオブスターズ(グラファール・レーシングマネージャー)夏場は休養し、秋の凱旋門賞を目標にしてきた。フォワ賞はいい前哨戦だったと思う。道中で多少折り合いを欠いていたが本来は気性の良い馬なので、4カ月間の休み明けの影響があったと思う。ファーブル師は前哨戦を活用するのが本当に上手なので今回は楽しみが大きい。馬体は大きくないが、均整がとれていて、いつも毛ヅヤのいい馬。これまでに大敗したのは英国ダービーだけで、どんな条件でも安定して走ってくれている。凱旋門賞というのは難しいレースで多少の運も必要だが、父シーザスターズもこの舞台で勝っているし、状態は良いので楽しみ。エネイブル、ウィンターを筆頭に相手は強力だが期待している。
[6]シルバーウェーヴ(タイエブ・レーシングマネージャー)昨年からメンコをつけるようになって、レース中も落ち着いて走れる。大飛びなので周りの馬との間隔が必要だが、フォワ賞は内枠で馬群に包まれてしまい競馬にならず、レース後は全く息切れもせずに帰って来た。今回は接触を避けるためにアウトコースを走らせたい。昨年は力を出せなかったが、2年前の凱旋門賞では残り400メートルですごくいい脚を使ってくれた。前日の現役馬セールに上場するが、馬はセリ会場には連れて行かないのでレースへの影響はない。
[7]アイダホ(オブライエン師)前走のソードダンサーSでは結果が出なかったが、先行する形のレース運びがこの馬に合わなかったかもしれない。2走前のキングジョージでは中団で脚を溜めて頑張ったので、今回も差しの競馬がしたい。昨年2着のハイランドリールの全弟。ガリレオ産駒でスタミナがあり重馬場は大得意。2400メートルがベストで、コースはどんな競馬場でも適応力がある。調子もいいので楽しみ。昨年の英セントレジャーでは転倒してしまったり不運な面もあるが、十分に我々の期待に応えてくれている。キングジョージでエネイブル、ユリシーズに次ぐ3着に入って、ビッグレースでも野心を持てる立場の馬になったと思う。
[8]チンギスシークレット(クルーク師)フォワ賞はあくまで前哨戦だが、素晴らしい競馬だったので凱旋門賞に視界が開けた。ベルリン大賞を勝った時に、フォワ賞から凱旋門賞に進むプランを考えた。重賞3連勝中で凱旋門賞に挑む資格は十分あると思う。前走の疲れもなく、状態はとてもいい。古馬になって馬体に芯が通った感じで本当に成長した。スタミナが豊富で、去年の暮れには今年はもっと長い距離のレースを使うことも検討していたが、芝2400メートルのG1を勝てる馬だと信じて調教してきた。道悪は得意なので雨は大歓迎。凱旋門賞は難しいレースで、特に今年はエネイブルを負かすのは大変なことだと思う。ユリシーズも強力なライバル。ただ3番手以下は混戦だと思うのでチャレンジする価値は十分ある。
[11]イキートス(グリューシェル師)前回のバーデン大賞は調子も良かったし、自分の力は出している。その後も状態は安定。凱旋門賞に向けての調整は上手く行った。小柄な馬で、体高も156センチしかないが、エネルギッシュで馬体の割に心臓が大きいのが特徴。追い込み馬で後方からの脚質だが、凱旋門賞は多頭数だし、それでは難しいので、去年のジャパンCのように馬群の中で競馬をすることにトライしたい。力のある馬なので、彼の潜在能力を欧州で最高の馬たちが集まるレースで見てみたい。招待がもらえれば今年もジャパンCへの遠征を考えている。バイエルン大賞もあるが、凱旋門賞の後に話し合う。今年で引退して種牡馬となるだろう。
[12]オーダーオブセントジョージ(オブライエン師)前走の勝ち方はとても印象的だった。昨年はこのレースで3着。今年も凱旋門賞への調整はうまく行った。大型馬で力強い走りをするタイプの馬。長距離戦の実績が示すようにスタミナがあるので、重馬場は歓迎。レース前は発汗するがこれは体質なので心配いらない。去年は先行してうまく行ったが、控える競馬もできる。凱旋門賞はなにが起きてもおかしくないが、私が望んでいるのはレースがごちゃつかずにこの馬が自分の能力を発揮してくれること。状態はいいので、そうなって持ち味を発揮してくれればいい結果を収めてくれると思う。
[13]セブンスヘブン(オブライエン師)ドバイシーマクラシックはジャックホブスの2着でポストポンドに先着した。5月にニューマーケットでジョッキークラブSを勝った時の走りは印象的だったが、残念ながらその後はシーズンを台無しにしてしまう問題があった。それでも、この馬を凱旋門賞に出走させたいと心の中で願い続けてきたので、凱旋門賞の前にひとたたきできたことに満足している。好馬体で気性も良くきれいなフォームで走る牝馬。差し馬なのでペースは流れてほしい。ジョッキークラブSではワンフットインヘヴンに5馬身もの差を付けて1着。昨年のヨークシャーオークスではファウンドに勝っている。能力のある馬なので、この相手でも。
[14]ブラムト(ルジェ師)ギヨームドルナノ賞の結果で皆をがっかりさせてしまったが、私が言いたいのはあのレースの走りは忘れてほしいということ。そして他のレースでの成績をこの馬の評価の参考としてほしい。25日のドーヴィルでの最終追い切りは柔らかい馬場の中よく走った。前走後も緩めず乗って納得のいく調整が出来ているし、C・デムーロ騎手もとてもいい調子と話していた。出遅れる癖があるので、ゲートの出がレースの結果を左右する。仏2000ギニーのようなスタートが切れれば凱旋門賞でもきっと好勝負になるが、前走のようなスタートでは難しいだろう。シャンティイ競馬場では2戦2勝。トリッキーなコースなのでこれはアドバンテージ。初距離については日曜日の夜にならなければわからないが、母系の血統からはこなせるはず。
[15]カプリ(オブライエン師)とてもいい馬だとずっと評価していたので、愛ダービーの勝利も驚きはなかった。セントレジャーでも勝ったようにスタミナがある。中間も調教では動いているが、15日前に走ったばかりなので、たとえ調教でいい印象を受けても、目に見えない疲れがあるかないかはレース当日にならないと分からない。ただ私の感触としては、非常にいい調子に見えることは確か。2920メートルで勝ったが、この馬のベスト距離は2400メートルだと思う。先行できるので、愛ダービーやセントレジャーのように好位置でレースを運べる。夏は軽いけがで使えないレースもあったが、今はめきめきと力を付けている。凱旋門賞はセントレジャーの結果次第で参戦したいと考えていた。愛ダービーではクラックスマン、ウィングスオブイーグルスに先着している。前走の疲れがなければ、いい走りを見せてくれると思う。
[16]プリュマティック(ビュロー・レーシングマネージャー)ドバウィ産駒らしい力強さがある。大観衆の前の出走馬パレードは多少気にするかもしれないが、気性は扱いやすく問題なくこなしてくれると思う。凱旋門賞は多頭数でリズム良く走ることが難しいレースだが、自分の力を出せる走りができれば。初距離だが過去の競馬振りや血統(母はサンクルー大賞馬のプリュマニア)からこなせると思う。前走を叩いての上積みが見込めるし、ただ出走するだけではなく、結果を出すつもり。この馬はまだ3歳で未知の魅力がある。ジョッキークラブ賞では結果が出せなかったがG1でも好勝負のできる素質馬と信じている。その答えは日曜日に出るね。
[17]エネイブル(ゴスデン師)前走後は2週間休養してから調教を再開した。素晴らしい状態に仕上げることができたと思う。この馬は走ることが大好きだが、朝の調教ではどうしてかあまり動かない。シーズンの前、同じ3歳牝馬のシャッタースピードと併せていたが、エネイブルはいつも遅れていたので私たちの評価は決して高くなかった。それが競馬場にいくと彼女はひょう変して、抜きん出た動きを見せる。愛オークスを勝ったとき、私たちは凱旋門賞を真剣に意識し始め、キングジョージで特別な馬であることを確信した。どんな位置からでも競馬のできる馬で、前走は前に行く馬がいないので逃げたが、本来は2、3番手を追走するのが好きな馬。先行力があって、直線の瞬発力もある。ただ、広々としたロンシャンで走らせたかったというのが本音。シャンティイはコーナーもきつく、トリッキーなコースなので本命馬にとって楽ではない。レースでは接触したり不利のないことを祈るが、一番優れている馬が勝つとは限らないので、絶対に勝てるとは考えていない。
[18]ウィンター(オブライエン師)前走は中間に挫石。それでも凱旋門賞を考えると一戦叩くことが必要だったので出走させることを決めた。連勝は止まったが一頓挫あったので結果には落胆していないし、使ったことで思惑通りに良くなっている。馬格のある牝馬で、春先と比べると馬は本当に成長した。速い流れでもスローでもどんな流れにも対応できる。重馬場でもG1を勝っているが、この馬に関してはどちらかと言えば良馬場を望んでいる。スタミナに関しては疑問もあるが、こればかりは実際に走ってみないと分からない。ただ、ナッソーSでマイルから距離を伸ばした時も、同じような状況だったが克服してくれたので今回も良いパフォーマンスを期待している。ムーア騎手が自らこの馬を選んだ。楽しみだね。
=取材 パリチュルフ=
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