【NHKマイルC】ジョーストリクトリ95点!香り立つ好馬体

[ 2017年5月3日 05:30 ]

芳醇(ほうじゅん)な香りが漂うコーヒー豆のようなジョーストリクトリの完成度に鈴木康弘氏が最高点
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 コーヒー豆のような小粒ぞろいの3歳G1に最高級の香りを漂わせた。鈴木康弘元調教師がG1出走馬の馬体を診断する「達眼」。第22回NHKマイルC(7日、東京)ではニュージーランドT優勝馬ジョーストリクトリを95点でトップ評価した。達眼が捉えたのは深いコクと上品な酸味が効いたコーヒーのようにバランスの整った仕上がりだ。

 自宅のテーブルに並べた馬体写真の細部まで目を通し終えた後は、焙煎(ばいせん)したてのコーヒーで一服。香気に優れた独特の酸味を楽しんでいるうちに、知りたくなったことがあります。コーヒー豆のランクはどうやって決めるのか…。飲みかけのコーヒーカップをテーブルに置き、スマホで少し調べてみました。

 ブラジルは精製方法、コロンビアは粒の大きさ、グアテマラやコスタリカは産地の標高で格付けしています。山地で生育されたコーヒー豆は昼夜の寒暖差でよく引き締まるため、酸味が強く香り立つ。グアテマラで最も格付けの高いのは標高4500フィート(約1372メートル)以上の山で収穫された「ストリクトリ」と呼ばれる豆です。

 名は体を表すと言いますが、ジョーストリクトリの馬体も最高ランクに評価できます。コーヒー豆を詰め込んだような立派な腹袋。それでいて高地で生育された豆のように引き締まっています。トモ(後肢)、肩にはたっぷりと筋肉を付けている。分厚い前後肢を支える下半身もたくましい。膝や飛節が大きく、球節から蹄まで寸分の狂いもありません。とてもバランスの整った体形です。

 顔立ちは実に精かん。アゴっ張りもいいので食欲旺盛なのでしょう。耳、目、大きな鼻の穴を一点に向け、利発さがうかがえる。12番人気で勝った前走・ニュージーランドTをフロック視する向きもあるそうですが、重賞ウイナーにふさわしい体つきと顔つきです。

 唯一、不満が残るのは気のない立ち姿。四肢に力を入れず、置物の人形のように平然と立っている。1マイルのG1を走るのだからもう少し緊張の色が欲しいのですが、馬は日々気配を変えていきます。コーヒー豆になぞらえれば焙煎前の生豆。時間の経過とともに色合いを変化させる。最終追い切りと栗東から東京への長距離輸送で気持ちが乗ってくる可能性はあります。

 ところで、一杯のコーヒーにはどれだけ人の手がかかっているか。種まきから収穫、乾燥、脱穀、選別、出荷、焙煎、配合…。ゲートインまで長いプロセスをたどる競走馬と同じです。今年のNHKマイルCはコーヒー豆のような小粒ぞろいといわれますが、ストリクトリはその名の通り、最高格付け。カップの中から香りが立ち上るような馬体です。解説はそのぐらいにして、冷めないうちに残りをいただくとしましょう。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日、東京生まれの73歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70〜72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許を取得し、東京競馬場で開業。78年の開場とともに美浦へ。93〜03年には日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。

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