【有馬記念】キタサンブラック100点!キ甲が「丘」から「山」に

[ 2016年12月21日 05:30 ]

キタサンブラック
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 グランプリは2強ボディーだ。鈴木康弘元調教師(72)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第61回有馬記念(25日、中山)ではキタサンブラック、サトノダイヤモンドを満点評価した。達眼が捉えたのは両馬の目覚ましい進化。ジャパンC、菊花賞からそれぞれG1連覇を目指す2強は21日に最終追い切りを行う。

 一緒に暮らしている我が子の成長には案外気付かないものです。「この子、しばらく見ないうちに随分背丈が伸びたな」。時々やってくる親戚に指摘されるまで分からない。12〜14歳の思春期を迎えた男の子の身長は1年で平均8センチ伸びるとされていますが、1日当たりでは0・2ミリ。親は毎日、我が子の姿を見ているから逆に気付かないのです。

 キタサンブラックの成長も毎日触れている厩舎スタッフには分からないでしょう。でも、G1に出走する時だけ馬体に接すると、その変化に気付きます。前走のジャパンCから1カ月弱の間にキ甲(首と背中の間の突起部分)が盛り上がってきました。キ甲とは馬の成長を示すバロメーター。体高(身長)も地面からこの突起部分までの長さを測ります。キ甲が伸びたために背中まで長くなったように映るのです。

 過去のG1出走時の馬体写真と見比べてみました。昨年の有馬記念時には平べったかったキ甲が今春の天皇賞、宝塚記念、JCと少しずつ小高い丘のように膨らみ、ここに来て山のように盛り上がってきた。登山でいえば9合目から10合目へ向かっている馬体。成長曲線は4歳の暮れになって成馬(人間の成人)の域に達しようとしています。

 発達した前後肢の筋肉はJC時から少しも落ちていません。適度な緊張感を持ってハミをくわえた立ち姿には落ち着きが感じられます。何度も書いたように脚が極端に長くて、頭の位置が高すぎる体形。言葉は悪いが、こういうキリン形の馬は脚を畳むのに時間がかかるため小脚を使えず、瞬間的に加速できません。平均ペースでじわじわ伸びてくるタイプです。ペースの緩急が激しくなる小回り中山よりも広い東京コース向き。有馬記念の舞台は本質的に不向きです。

 それでも、私はキ甲の変化にこだわりたい。大人へ脱皮した馬体。JCからもう一段ギアを上げた走りができるのではないか。「しばらく見ないうちに随分タフになったな」。昨年の有馬記念(3着)以来1年ぶりに生で観戦する中山のファンをうならせるような競馬を期待したい。(NHK解説者)

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2016年12月21日のニュース