【エ女王杯】マリアライト“採点外”伝説の聖獣思わせる不思議な馬体

[ 2016年11月9日 05:30 ]

聖獣グリフィンのようなボディーを想起させるマリアライトの立ち姿

 ミステリアスボディーで3つ目のタイトル獲りだ。鈴木康弘元調教師(72)がG1候補の馬体を診断する「達眼」。第41回エリザベス女王杯(13日、京都)では、昨年の優勝馬で今春の宝塚記念も制したマリアライトを1番手に指名した。達眼が捉えたのは伝説の聖獣を思わせる不思議な馬体構成。前哨戦・府中牝馬S勝ちのクイーンズリング、半年の休み明けで臨むミッキークイーンも高評価した。

 ロンドンにある英国王立裁判所のすぐ近くに不思議な姿をした聖獣のブロンズ像が建っています。鷲の顔、翼、上半身とライオンの下半身を持つ伝説の合成聖獣グリフィン。ギリシャ神話には女神の乗り物として登場しますが、ロンドンでは財産の守護神、知識の象徴にもなっています。

 マリアライトはこの合成聖獣を想起させる不思議な体つきです。お世辞にも褒められない薄手のトモ(後肢)。今回だけ寂しく映るわけではありません。昨年のエリザベス女王杯時も今年の宝塚記念時も、言葉は悪いが貧相なトモでした。こんな後肢でなぜG1を2つも獲れるのか、首をひねるしかありません。ところが、肩に目を移すと、同じ馬だとは思えないほど厚手の筋肉で隆起しています。G1ホースにふさわしい発達した肩。さらに前方へ目を移すと、首差しがきゃしゃなのに、顔立ちは精かんです。たくましい顎っ張りと額の張り、大きな鼻の穴…。尾を見ると、寂しいトモとは不釣り合いなほど立派。ジグソーパズルで、別の馬のパーツを間違ってはめ込ませようとしたかのような前肢と後肢、首と顔のアンバランスさです。

 この世に全ての部位がパーフェクトなサラブレッドなどいません。弱い部位を強い部位が補てんできるのが一流馬の体のメカニズム。マリアライトの貧弱な後肢と首差しは優れた前肢と顔が十全に補てんしている…そう解釈するしかない体形です。四肢の均整が取れた父ディープインパクトとは明らかに違う。重厚な馬体だった母の父エルコンドルパサーの影響も全く感じさせない。似ているとすれば…。鷲の翼こそ付いていませんが、伝説の合成聖獣を思い起こさせるミステリアスなボディーなのです。

 常識外れの体形に点数は付けられませんが、毛ヅヤと立ち姿は満点です。立冬を越えた季節。牝馬の多くは牡馬より一足早く冬毛を伸ばし始めるものですが、この女傑には冬毛も見えず、マリアライトの宝石のような光沢を放っています。よほど体調が良いのでしょう。過去の写真と比べてみると、四肢の立ち位置が全て同じ。よほど気持ちが安定しているのでしょう。唯一、ハミを着けずにチェーンシャンク(鼻を押さえる馬具、ハミほどの制御力はない)だけの着用で写真撮影に臨みました。よほど従順なのでしょう。女神を乗せた聖獣グリフィンのように…。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日、東京生まれの72歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許を取得し、東京競馬場で開業。78年の開場とともに美浦へ。93~03年には日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。

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