【スプリンターズS】芝もダートも二刀流!レッドファルクス快勝

[ 2016年10月3日 05:30 ]

<スプリンターズS>レースを制したレッドファルクス(13)と馬群に沈んだビッグアーサー(左上)
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 晩成型の二刀流ホースがG1初挑戦でタイトル奪取だ。「第50回スプリンターズS」が2日、中山競馬場で行われ、3番人気のレッドファルクスが豪快に差し切って快勝。ダートのオープン、芝のG3・CBC賞に続く3連勝で短距離界の頂点に立った。1番人気に支持されたビッグアーサーは12着に大敗した。

 波乱の結末に揺れるスタンド。大歓声を浴びながらミルコ・デムーロが紅潮した顔でレッドファルクスと共に脱鞍所へ引き揚げてくる。「こんなに凄い馬になるとは思わなかった。初勝利の時にも乗せてもらったが、どんどん良くなって…」。その傍らでは尾関師が込み上げてくる思いを押し殺して言葉を振り絞った。「まさか右回りのG1を勝てるとは思わなかった。(実力を過小評価して)馬に謝りたい」。誠実な人柄で知られるトレーナーは言葉を継ぐ前に二重三重の祝福の人垣にのみ込まれていった。

 G1初挑戦。通算7勝は全て左回り。レース前の尾関師の懸念を一蹴するストライドだった。中団から5、6番手に進出した直線入り口。芦毛がうなりを上げて末脚を伸ばす。直線半ばに反応が鈍りかけたが、M・デムーロの左ステッキの連打に応えて再びエンジンが掛かった。逃げ粘るミッキーアイルを頭差捉えた。「ズブい面があるし、直線が短いのでいつになく早めに動いた。右回りも気にしていたけど、それでも勝つんだから凄い」。同馬とのコンビで3戦全勝とした鞍上はこう続けた。「賢い。併せたら負けない。凄い成長力。大好きな馬だ」

 大器晩成を地でいくサラブレッド。3歳時には左後肢が弱いせいで条件クラスに低迷していたが、4歳になった昨年秋、ダートを含めた2連勝でオープン入り。「左後肢がしっかりして、攻め馬でもオープン馬らしい動きになった」と尾関師は明かす。

 レース前、同師は鞍上とこんな会話を交わしていた。「尾関先生はG1を勝ったことがあるの?」とM・デムーロ。師が「ないです」と答えると、鞍上の顔色に赤みが差した。「勝つためのモチベーションにできた。トレーナーもG1を優勝できて良かった」と鞍上は笑った。

 尾関厩舎G1・22回目の挑戦で念願のV。「いろいろ思い出して…G1を勝つような馬をやらせてもらって…」。目元を熱くする師。「それより、馬を褒めてあげてください。右回り、左回りの枠を超えたサラブレッド。芝もダートも走る二刀流です」と、手柄を馬に譲った。

 今後はダートのJBCスプリント、米BCスプリント、芝の香港スプリントなどがプランに挙がる。ファルクスとはラテン語で古代ローマ時代の両手剣。その名の通り、晩成の二刀流G1ホースが誕生した。

 ◆レッドファルクス 父スウェプトオーヴァーボード 母ベルモット(母の父サンデーサイレンス)牡5歳 美浦・尾関厩舎所属 馬主・東京ホースレーシング 生産者・北海道千歳市社台ファーム 戦績18戦8勝 総獲得賞金2億4571万8000円。

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