【スプリンターズS】シュウジ100点!寺山修司の名言を体現

[ 2016年9月28日 05:30 ]

シュウジ

 大志を抱ける3歳馬の急成長だ。鈴木康弘元調教師(72)がG1候補の馬体を診断する「達眼」。第50回スプリンターズS(10月2日、中山)ではビッグアーサー、ミッキーアイルの人気両馬と共に伏兵シュウジを満点評価した。達眼が捉えた変化とは…。

【スプリンターズS】

 サラブレッドは3歳の夏を越すと、どれだけ変わるのか。その具体的な変化がシュウジの立ち姿に表れています。口元に注目してください。NHKマイルC時はリングバミの引き手をじゃれるようにかみながら立っていました。やんちゃな若駒によく見られる、いたずらです。好きに遊ばせておいた方がおとなしく立っているので担当スタッフもそのままにしていたのでしょう。ところが、今回の写真撮影では引き手にじゃれつくこともなく、ハミをしっかり取っています。大人になった。成長を端的に示すワンシーンです。

 尾のしぐさにも変化がうかがえます。NHKマイルC時には尾を両後肢の間に巻き込んでいました。警戒心や不安、恐れを示すしぐさです。今回は尾の付け根を少しだけ持ち上げながら滑らかに下に垂らしている。こういう尾の状態を「尾離れが良い」といいます。適度な緊張感と落ち着きを示すしぐさ。口元も尾もひと夏越しての変化を伝えているのです。

 馬名は劇作家の故寺山修司氏にあやかって命名されたと聞きました。競馬ファンでも知られた寺山氏のエッセーにこんな一文があります。「4歳牝馬(現在の3歳牝馬)といえば、セーラー服の女学生といったところである。間違いなく、全馬ともバージンである」(競馬場で逢おう6)。3歳牡馬のシュウジに置き換えるなら、学ランの襟カラーと第1ボタンを外したやんちゃ小僧がたくましい青年に脱皮しました(いまだ童貞ですが…)。

 短距離ランナーらしい太くて短い首差し。丸みの体つき。「青年よ、大尻を抱け」とは寺山修司氏の名言ですが、尻にもパワーがみなぎっています。G1獲りの大志を抱ける成長ぶりです。

 ◆鈴木 康弘 1944年(昭19)4月19日、東京生まれの71歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許を取得し、東京競馬場で開業。78年の開場とともに美浦へ。93~03年には日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなどで27勝。 ※馬体診断の点数は100点満点

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