【天皇賞・春】“盾男”豊マジック!キタサンブラック4センチ差V

[ 2016年5月2日 05:30 ]

天皇賞・春を鼻差で制した(左から)キタサンブラックと2着カレンミロティック

 これが菊花賞馬の底力だ。1日、京都競馬場で行われた伝統の長距離戦「第153回天皇賞・春」は2番人気のキタサンブラック(牡4=清水久)が最後の直線でいったんは前に出たカレンミロティックを差し返し、わずか4センチ差で2度目のG1制覇を飾った。鞍上の武豊は06年ディープインパクト以来の春の盾7勝目で、JRA・G1通算70勝。なお、昨年の有馬記念優勝馬ゴールドアクター(牡5=中川)は12着に敗れ、1番人気馬は10年連続で勝利なしとなった。

【レース結果】

 やはり絵になる男だ。爽やかな五月晴れの下で会心のユタカスマイルがはじけた。キタサンブラックと激闘をものにした武豊は北島三郎オーナーと何度も抱擁、握手。「自分自身、久しぶりの天皇賞・春の勝利はうれしい」。同一G1史上最多タイとなる7勝目とはいえ、06年ディープインパクト以来10年ぶりのV。率直な心境を口にした。

 歴史に残る直線の追い比べだった。直後のカレンミロティックに外から馬体を併せられ、いったんは前に出られた。だが、名手は左ムチで愛馬を奮い立たせて反応を確かめると、あとは夢中で手綱をしごいた。写真判定の結果はわずか4センチだけブラックが前。「差し返せると思っていたが、判定が出るまではドキドキした。よく差し返してくれた」と愛馬を称えた。

 天才・武豊の歴史にも残る1勝となった。これが節目のJRA・G1・70勝目だが、意外にも逃げ切りは初めて。「ゲートの駐立が得意じゃない馬なので位置取りはスタートしてからと思っていたが、出てからは迷いはなかった」。スタートを決めるとハナに立ち、マイペース。巧みに後続を引きつけながら手応え十分に直線を向いた。ラストシーンを「いったん首ほどは抜かれた。でも、まだ(力は)残っているなと思った」と振り返るが、余力を残したのは“ユタカマジック”のなせる業に他ならない。

 菊花賞馬の底力も見逃せない。首差で制した菊花賞に続いてこの日も抜群の勝負根性を発揮。清水久師は「出発の朝に栗東で馬を見たら、張りがあってピカピカ。競馬の日を分かってる」と脱帽。「いい意味で緩さがあります」とまだ成長の余地を残しているとの見立ても示した。

 今後は未定ながら宝塚記念が視野に入ってくる。凱旋門賞挑戦の可能性を問う気の早い質問に、北島オーナーは「ひとまず何かを成し遂げてから次へ」と意味深なコメントにとどめたが、それももはや夢物語ではない。「これからもさらに強くなりそうなので楽しみ」と武豊。絵になる男たちに囲まれたブラックの馬体は、よりいっそう輝きを増して見えた。

 ◆キタサンブラック 父ブラックタイド 母シュガーハート(母の父サクラバクシンオー)牡4歳 栗東・清水久厩舎所属 馬主・大野商事 生産者・北海道日高町ヤナガワ牧場 戦績10戦6勝 総獲得賞金5億3657万7000円。

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