【フローラS】チェッキーノ 藤沢和厩舎の秘策「長手綱の縦列追い」

[ 2016年4月21日 05:30 ]

ウッドコースで追い切るチェッキーノ(左)は 終始、長手綱で併せず、リラックスした走りでゴール

 東京競馬開幕週のメイン「第51回フローラS」(24日、3着までオークス優先出走権)の追い切りが20日に美浦トレセンで行われ、アネモネS快勝のチェッキーノ(牝3=藤沢和)が軽快なフットワークを披露した。12年札幌2歳S、東京スポーツ杯2歳Sを連勝したコディーノの全妹という良血。現役最多のJRA通算1297勝を挙げる名伯楽・藤沢和雄調教師(64)のオリジナル調教で、オークスへ前進する勢いだ。

【フローラS】

 チェッキーノの馬上に藤沢和師が大声で追い切りの指示を出す。「ゴールまで長手綱のまま縦列を崩さずに行け」。馬上の杉原が緊張した顔で聞き返す。「長手綱のまま…ですよね」。同師は「そうだ。ゴールまで縦列を崩すなよ」と念押しすると、馬場入り前の準備運動を続ける他の管理馬4頭の馬上にも同じ指示を与えた。

 Wコースで5頭が一度も馬体を併せず、2馬身の等間隔を保ったままゴールする藤沢和厩舎のオリジナル調教「縦列」追い。チェッキーノの杉原は指示通りに手綱を長く持って、5頭の縦列の3番手を追走していく。気負いのない身のこなし。軽やかな脚取り。栗色のタテガミが春の微風に揺れる。

 「マイルから2000メートルに距離が延びるので、道中リラックスして走ることを目的にした調教です。前後に馬がいても、かなりリラックスできていました。この走りをレースでもできれば最後にかなりの瞬発力を使えるはずです」。同師に代わって愛弟子の杉原が「縦列」追いの狙いを説明する。「手脚が軽くて、全兄のコディーノによく似た乗り味です。真面目で前向き、燃えやすい気性も同じ。だからこそ落ち着きが大切です」と続けた。

 「コディーノ、ハッピーパス(母)、シンコウラブリイ(伯母)…この血統(牝系)はみんな素軽いよね。スピードと一瞬の切れがある。前向きな気性だからせかせては駄目。ノシを付けて追う必要はないんだ」と藤沢和師は言う。アイルランド産の祖母ハッピートレイルズから枝葉を伸ばしたこの牝系のサラブレッドほぼ全てを育ててきたトレーナーの極意。アネモネSを快勝しながら、4週後の桜花賞には登録さえしなかった。調整をせかすと気負ってしまう血統だからだ。

 デビュー3戦全て最速の上がり。2歳重賞連勝のコディーノを思い起こさせる瞬発力で未勝利戦、アネモネSを楽に差し切った。「中山の急坂をあの勢いで上がってくるなんて、なかなかできない。やっぱり血統なんだね」と同師。開幕週の東京2000メートルコースであの切れ味を再現できれば、オークスへ夢が広がる。馬は撫で柄(馬は育て方次第)という。血統の威力を引き出す長手綱の縦列追いだ。

 ▼長手綱とは 手綱を長く持って、手綱とつながっている口中のハミを緩めること。馬をリラックスした状態で折り合わせるために用いる。ハミ受けが敏感で引っ掛かる馬に効果的。逆に手綱を短く持つと、ハミが引っ張られて馬に気が入る。

 ▼馬名の由来 チェッキーノとはイタリア語で「射撃の達人」の意味。ACミランで活躍する日本代表の本田圭佑に地元イタリアのメディアがチェッキーノと命名した。全兄のコディーノはイタリア語で「弁髪」の意味。元イタリア代表ロベルト・バッジオの愛称だった。

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2016年4月21日のニュース