【びわこ・マスターズC】江口 孫よ見てくれ“最強のおじいちゃん”

[ 2016年4月12日 05:30 ]

孫の恭司君を抱っこしながら家では日々デレデレの江口晃生

 プレミアムG1「第17回マスターズチャンピオン」(優勝賞金1000万円)が12日、滋賀・ボートレースびわこを舞台に開幕する。13年、マスターズデビューと同時に最年少Vを決めた江口晃生(51=群馬)が思い出の場所に帰ってきた。最近は被災地で未来ある少年少女に夢を伝えるなど、水上以外の活動にも熱心。昨年末には初孫も生まれ、やる気200%。“最強のおじいちゃん”の座をつかむべく、気合が入る。

 山崎智也、毒島誠が昨年末のグランプリをワンツーするなど、わが世の春をおう歌する上州軍団。その群馬を長くけん引し、今でも“上州の顔”といえるのが江口だ。

 若い頃からカリスマ。そして今もカリスマ。長く最前線で頑張り続けていることを証明するデータがある。A、B、C級制度(~95年)から現在のA1~B2級制度まで、60期連続で最高ランクを維持しているのだ。「ただの負けず嫌い。3節オール連対でなければ落ちるという時も乗り越えた」。難関でも諦めない。その不屈の精神が江口の支えだ。

 チャレンジ精神も半端ではない。09年、44歳にして早大大学院スポーツ科学研究科に入学した。クラスメートとなった元巨人の桑田真澄氏に伝授された教えがある。「精いっぱい打ち込む姿にこそ価値がある。燃え尽きるまでの精神」。江口は胸に刻んだ。

 水上のバトルと学業の両立は過酷だったが、明らかに江口はステップアップした。13年、48歳と同時にデビューしたマスターズ。先輩たちの姿を見て、桑田氏の言葉がシンクロした。「加藤峻二さん、万谷章さん(ともに引退)、高塚清一さんたちが“ワシら、何しても最年長記録やな”なんて言いながら張り合っていた。それを見て俺も、もっとやってやろうと思った」。大先輩が懸命に打ち込む姿に刺激を受けた江口。いきなりマスターズ最年少Vを決めた。場所は今回の舞台でもある、びわこだった。

 「自分もそういう背中を後輩に見せられるようになりたい。(マスターズは)決して集大成とか思っていない。どこかで線引きしたら、そこまでになっちゃうからね」。江口の貪欲な姿勢に終わりはない。

 現在は“夢先生”の活動に力を入れている。東北の被災地へと足を運び、未来ある小学生に思いを伝える。「夢を追うこと、諦めないことの大切さを教えている。そうすると自分も頑張れる」。実はボートレーサーで夢先生を務めているのは江口1人。長いこと手を挙げてきたが「ボートレースを理解し、登録してもらうのに3年かかった」と明かす。公営競技からの参加は決して簡単ではなかったが、江口の思いは伝わった。今もレースの合間を利用して、夢先生として活動している。

 その江口に昨年12月23日、初孫・恭司(きょうじ)君が誕生した。何というかわいさ。目に入れても痛くないとは、このことだった。「あまりにかわいくて、(こんな気持ちで自分は)勝負師としてやっていけるのか?と心配になった」という。だが、すぐに気持ちが切り替わった。「今は必ず抱っこしてからボートレース場に向かう。(抱っこして)成績が下がったら孫に申し訳ない。孫ができて、さらに頑張れるようになった」。

 最近の楽しみは孫の動画をさかなに晩酌をすること。孫への愛情という強力な武器を手に入れた江口。“最強のおじいちゃん”を目指す戦いが、きょう始まる。

 ◆江口 晃生(えぐち・あきお)1965年(昭40)2月11日、群馬県出身の51歳。84年3月登録の54期生。同期は金子良昭、島川光男、落合敬一ら。通算優勝は84回(SG2、G1・5回を含む)。09年に早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に合格し話題に。1メートル65、55キロ。血液型AB。

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