ウインクリューガー「相馬野馬追」参戦!平地G1馬登場は史上初

[ 2016年3月1日 05:30 ]

高倉さんとクリューガー

 2003年に中央競馬のG1レース・NHKマイルCを制したウインクリューガー(牡16歳)が、7月下旬に開催される伝統神事「相馬野馬追」に出場することになった。昨年暮れにけい養先の牧場が閉鎖。路頭に迷うなかで、南相馬市の高倉豊光さん(53)に引き取られ、「デビュー戦」に備えている。JRA平地G1ホースの登場は史上初。我が家を失ったサラブレッドが、相双地区の復興のシンボルで恩返しを果たす。

 まだ震災の爪痕が残る南相馬市原町区の民家で、ウインクリューガーは興味深げに視線を遠くへ向けていた。550キロはある馬格は陽光を浴びて輝きを放っている。昨年12月10日から世話をする高倉豊光さんは「まるでアメ車。種馬になるとごつくなるが、首とか本当に太い」と説明した。

 07年に引退したクリューガーは北海道で幸せな日々を過ごしていたが、昨年暮れに転機が訪れた。けい養先の日高スタリオンステーション(浦河町)が年内閉鎖を決定。他馬の移籍先が決まるなか、新たな出合いが訪れた。「一度G1馬で馬追に出たいと思っていたので、譲ってもらいました」。馬追歴約30年の高倉さんは原発事故で自宅が避難準備区域となり、一時は馬を手放した。昨年暮れに桑折町の知人からクリューガーを紹介され、引き取ることを決断。これまではタケデンマンゲツなど気性の荒い馬ばかりだったが、「この馬は素直。しかも賢い。手はかからないし、馬追は全く問題はないでしょう」と信頼を寄せている。

 鎌倉時代から伝わる相馬野馬追には、毎年約500頭が参加。過去には10年の中山大障害を勝ったバシケーンも出場しているが、中央の平地G1馬となれば初という。今年は7月23~25日に開催。左足に不安を抱えているクリューガーは行列のみの予定だが、高倉さんのスケジュール次第では「神旗争奪戦」に参加する可能性がある。高倉さんも「この馬に出合えたのも何かの縁。現役時代にファンだった人が懐かしんでくれれば。きっと牧場の人も喜んでくれるはず」とデビューを待ちわびている様子だ。

 今後は軽めの乗り運動などを再開し、旗の音などに慣れさせる訓練などで本番に備える。競争馬の行く末は必ずしも順風ではないが、再びスポットライトを浴びることができる元G1馬は復興のシンボルとなる神事で「幸せな瞬間」を体感するに違いない。

 ◆ウインクリューガー 父タイキシャトル 母インヴァイト(母の父ビーマイゲスト)。2000年2月13日生まれ。牡16歳。生産者・静内橋本牧場。栗東・松元茂樹厩舎に所属。3歳時にアーリントンC(G3)で初重賞制覇を飾り、NHKマイルC(G1)を9番人気で制す。その後は不振で、7歳に障害に転向して引退。戦績34戦5勝。08年から日高SSで種牡馬となる。総獲得賞金2億524万8000円

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