【有馬記念】須貝師“ゴールドは繊細で敏感で賢くて、人間っぽい馬”

[ 2015年12月21日 05:30 ]

須貝師

 須貝尚介師(49)とゴールドシップの歩みは、偶然とは思えないほど重なる。09年3月6日、厩舎開業から5日後にゴールドは北海道の出口牧場で生まれた。母ポイントフラッグには騎手時代の指揮官が15戦中7戦で騎乗。その縁で預かることが決まり、当歳時から何度も牧場に足を運んでいた。

 放牧地では「いつの間にか、呼べば一番に来るようになっていたんだ」とうれしそうに振り返る。もちろん、誰にでも優しい顔を見せる馬ではなかった。年を重ね、放牧先では度々スタッフを病院送りにした。牧場から「今すぐに来てください」と電話がかかってきたことも何度かある。馬房の奥で人に背を向けて、出てこないのだという。

 「オレが行ってシップ、何してんねん、と言うと、振り向いてトコトコとやってくるんだ。繊細で敏感で賢くて、人間っぽい馬。馬には感情があることを、あらためて教えてもらったね」

 決して完全無欠ではない。浮き沈みの激しい成績が示すように、その対極。それも人間のような感情を持っていたからゆえ。須貝師は「人間らしい」ゴールドが大好きだと語る。

 厩舎に初重賞、そして初G1をもたらしたのはこの馬だった。「今の自分、今の須貝厩舎があるのはシップのおかげ」と須貝師。まさに“二人三脚”の航海。しかし、それもいよいよ終わりが近づいてきた。

 「もちろん勝ちたいという思いは持っているけど、これ以上、シップに何かを望むのは申し訳ない。とにかく、シップの好きに走ってくれたらそれでいいよ」

 感動の大団円か、それとも――。いずれにしても、走り終えたゴールドを指揮官は優しく迎え入れる。

 ◆須貝 尚介(すがい・なおすけ)1966年(昭41)6月3日、滋賀県出身の49歳。85年に父の須貝彦三厩舎から騎手デビュー。JRAで重賞4勝を含む通算302勝を挙げて、08年に引退。09年に厩舎開業。12年には史上最速でJRA通算100勝を達成。ゴールドシップやジャスタウェイなどで海外を含めてG1を11勝。

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2015年12月21日のニュース