【日本ダービー】里見オーナー G1初Vへクラウン&ラーゼン2頭出し

[ 2015年5月25日 05:30 ]

「夢を現実に」と書かれた色紙を持ちダービーへ意気込む里見治オーナー

 さあ、ダービーウイーク!サラブレッドの一世一代の晴れ舞台に「サトノ」の冠名で知られる里見治オーナー(73)が、サトノクラウン、サトノラーゼンの2頭出しで挑む。日本のエンターテインメント界をリードする「セガサミーホールディングス」を率いる業界の雄が愛馬、競馬、そしてダービーへの思いを熱く語った。

【日本ダービー】

 12年に生産された現3歳馬6897頭の中で、わずか18頭だけが舞台に立つことを許される今年の日本ダービー。ゲートインするだけでも難しい競馬の祭典に、里見オーナーはサトノクラウン、サトノラーゼンの2頭出しで臨む。

 「もちろん初めての経験ですから。本当によかったな、というのが率直な気持ちです」

 馬主歴は20年を超えるが、所有馬がダービーに出走したのは昨年のサトノルパン(14着)が初めて。

 「ルパンは距離が長いと思っていたので正直参加するだけという感じでした。今年はその分もかなり期待しています。31日(レース当日)が今から楽しみです」

 ダービーはもちろん、G1タイトルをまだ手にしたこともない。

 「自分より後から馬主になった人の方がたくさん勝っていたりしますから。それでも最近は重賞(G2、G3)を勝てるようになってきた。サトノノブレス(重賞2勝、菊花賞2着)で、大きなレースも意識できるようになりました。

 サトノクラウンは13年セレクトセール1歳セリで5800万円(税抜き)で落札した。

 「(父の)マルジュという種牡馬は、よく知らなかったんですが、何となくいい感じだなと思いました。上品で賢そうな好みの顔をしていた。購入のアドバイスをお願いしている池江先生(泰郎氏=本紙評論家)に見てもらったら“なかなかいい馬です”と。それで買ってみようと思ったんです。ただ、ここまで出世してくれるとは、その時点では思っていませんでした」

 昨年10月のデビュー戦(東京)を快勝すると、続くG3東京スポーツ杯2歳Sも制し、無傷で重賞ウイナーとなった。

 「直線で前が詰まってしまい4、5着がいいところかなと見ていました。でも、ジョッキー(ムーア)が空いたスペースに突っ込むと、凄い脚で抜けてきた。これはうまくすれば、いいところまで行けるかなと期待を持ち始めました」

 期待に応え3連勝で弥生賞V。クラシック1冠目の皐月賞では1番人気に支持されたが、道中の不利も重なって6着に敗れた。

 「コーナーで2度、外に振られる大きな不利があった。それでも直線で追い上げてくれました。がっかりはしましたが、目いっぱい走って負けたわけではない。あの負け方なら捨てたもんじゃない。ダービーで巻き返せる可能性はあると、思わせてくれました」

 一方のサトノラーゼンもクラウンと同じセリで6600万円で購入した。デビュー戦から快進撃のクラウンとは対照的に初勝利は5戦目。

 「勝ち切れない競馬が続きました。未勝利は勝てると思っていましたが、その後はどこまで、という程度の期待でした。本当は同じ池江厩舎に預けた、もう1頭のディープインパクト産駒(サトノダイレンサ)の方を期待していたんですが、まだ未勝利なんです」

 初V後、3戦目で2勝目を挙げると、勢いに乗ってG2京都新聞杯を連勝。ダービーへの“最終切符”を手にした。

 「2勝目の時点で、だいぶ成長したなとは思いましたが、正直、重賞を勝つ自信はレース前は10%くらいしかありませんでした。2、3着に入ってくれればと思っていたので、まさか勝てるとは。でも振り返ると、結構強い相手と競馬をしてきている。前走の勝ち方もよかったし、この馬も期待を持っています」

 初めての所有馬は92年にデビューしたミラクルサミーで5勝をマークした。

 「当時、馬好きの役員がいて“仕事の関係先に馬主が多いので、社長が馬を持ってくれると話ができる”と。ただ、当時は大きいレースで少し馬券を買う程度の興味。実は馬を買ったことすら忘れていた。デビュー直前に調教師(工藤嘉見師)から電話があって思い出したくらい。それまで馬も見たこともなければ、調教師の顔も知らなかった」

 5戦目の京都で初勝利を挙げ初めての東京遠征。

 「入院していたが、(看護)師長の制止を振り切って応援に行ったら、目の前で勝ってしまった。何とも言えないワクワクドキドキ感がありました。ミラクルサミーがいなかったら、馬主は続けていなかったでしょう」

 半世紀近く、エンターテインメント業界をけん引してきた里見氏にとって、競馬はどんな存在なのか。

 「単に勝ち負けじゃない。いろんな意味でロマンがある。シビアな仕事の最高の息抜き。何より楽しませてもらっている。自分が楽しんでいないと、人を楽しませることはできない」

 経営哲学にも通じる競馬への思い。10年ほど前から競走馬の購入に本腰を入れ、高額馬が結果を残せないことも多かったが、諦めることなく馬を買い続け、ようやく頂点を狙える馬に巡り合えた。

 「勝ってほしい。簡単ではありませんが、夢と希望を持って臨みたい。本当に楽しみです」

 仕事の延長線上から始まった約23年の馬主人生。その集大成となるか。里見オーナーは誰よりも「楽しみ」ながら、2頭の晴れ舞台を見守る。

 ◆里見 治(さとみ・はじめ)1942年(昭17)1月16日、群馬県出身の73歳。65年に実家が経営していた食品メーカー「さとみ」の事業を新規開拓しゲーム機などの販売を手掛ける。80年、関連企業だったサミー工業(現サミー)の社長に就任。パチンコ、パチスロ機の開発、販売に尽力し同社を業界大手へと成長させた。04年に大手ゲーム機メーカーのセガと経営統合。セガサミーホールディングス株式会社を設立し代表取締役会長兼社長に就任。

続きを表示

この記事のフォト

2015年5月25日のニュース