【日本ダービー】ワンアンドオンリー優勝!橋口師「ついにやった…」

[ 2014年6月2日 05:30 ]

橋口師悲願のダービー!!直線の叩き合いを制し、3歳頂点の座に立ったワンアンドオンリー(左)。2着イスラボニータ(左から2頭目)、3着マイネルフロスト(同3頭目)

 名伯楽がついに夢をかなえた。3歳サラブレッド7123頭の頂点を決める「第81回日本ダービー」は、3番人気のワンアンドオンリー(牡=橋口)が皐月賞馬イスラボニータとの追い比べを制して優勝した。鞍上の横山典弘(46)は2回目の制覇。また同馬で20頭目のダービー挑戦となった橋口弘次郎調教師(68)は、悲願のダービートレーナーの称号を、自身が手掛けたハーツクライの産駒で手にした。

【レース結果】

 検量室前に歓喜の輪が広がった。橋口師に握手を求める関係者が絶えない。「ついにやった…」。そうつぶやいた後、声が続かない。まさに放心状態。報道陣に囲まれた第81代ダービートレーナーは「もう涙は枯れたよ。競馬人生、最高の日だな。ダービーは格別だ。地に足がついていない。後にも先にもこんなことはない。ドバイで勝った時もなかったよ」と、かすれ切った声で喜びを口にした。

 一生忘れることのできない、2分24秒6となった。2番枠から好スタートを決めたワンアンドオンリーは、好位のインを確保。3番手に付けたイスラボニータを自然とマークする形に、師は「よしよしと思った」と言う。道中はゆったりと流れて直線へ。坂下で早くも先頭に並び掛けようとする愛馬が視界に入ると、もはや叫ばずにはいられなかった。

 「イスラに並んだ時、声が出たね。久しぶりに声を出して応援したよ。最初は座って見ていたけど、立ち上がった。追い比べになれば負けないと信じていたし、ゴールまでにきっちりかわすと思っていた。ダービーを勝てて、あと1年半あるけど、もう調教師を辞めてもいいぐらいです」

 物心ついた時から、ダービーは憧れだった。宮崎の実家は毎年数頭のサラブレッドを生産していた。「小さい頃、テレビのない時代からラジオにかじりついて、ダービーを聞いていました。(90年に)初めてダービーに馬を出した時、毎年このレースに挑もうと決意したんです」。昨年までに延べ19頭を送り込んで2着が4回。ダービーを勝つことの難しさを誰よりも知っている。それゆえ「勝ちたい」という思いも募っていった。

 「本当にダービーは思い入れの強いレース。ゴール板を過ぎたら、親父の顔、おふくろの顔がね…」。そう口にすると、指揮官は思わず目を潤ませた。追い求めてきた夢はかなえたが、また大きな目標ができた。目指すは英G1のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS。06年に3着に敗れた父ハーツクライのリベンジだ。「秋の菊花賞でもいい競馬をしてくれると思いますが、オーナーと(来年は)凱旋門賞じゃなく、キングジョージを目指したいなと話していたんです。これでちょっと現実味を帯びてきました。ハーツの子でキングジョージを勝つのは私の夢ですからね」

 10年のダービー、ローズキングダムで2着に敗れた橋口師は「ハーツの子でダービーに来る」と宣言。あれから4年、見事に有言実行してみせた。再来年2月の定年まで、まだ1年9カ月も残っている。名伯楽の新たな挑戦は始まったばかりだ。

 ◆ワンアンドオンリー 父ハーツクライ 母ヴァーチュ(母の父タイキシャトル)牡3歳 栗東・橋口厩舎所属 馬主・前田幸治氏 生産者・北海道新冠町ノースヒルズ 戦績9戦3勝 総獲得賞金3億1329万1000円。

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