【皐月賞】イスラボニータ フジキセキ産駒最終世代でクラシック初制覇

[ 2014年4月21日 05:30 ]

「戦国」皐月賞を制したイスラボニータ。鞍上の蛯名騎手は人さし指で「1番」のポーズ

 牡馬クラシック1冠「第74回皐月賞」が20日、中山競馬場で行われた。2番人気イスラボニータが直線鋭く伸びて快勝。鞍上の蛯名正義騎手(45)は19度目の挑戦で皐月賞初V。管理する栗田博憲師(65)は98年高松宮記念(シンコウフォレスト)以来、約16年ぶりのG1制覇で、クラシック初優勝となった。1番人気トゥザワールドは2着。3着ウインフルブルーム、4着ワンアンドオンリーまでダービー(6月1日、東京)の優先出走権を獲得した。

【レース結果】

 戦国皐月賞も、終わってみればイスラボニータの独り舞台。蛯名が完璧な騎乗でVへと導いた。内め2番枠からのスタート。外から殺到した先行馬を前へ行かせると、中団に生まれた馬群の切れ目に誘導した。「非常にいい形で折り合いがついていた」と蛯名。3~4角は先行馬群のすぐ外、荒れた部分をギリギリで避けた絶妙なコーナリングでクリアすると、目前のトゥザワールドめがけて追い出す。前脚を水平に突き出す独特の走法で加速すると、内で食い下がるワールドを直線坂上で突き放した。

 「4角の手応えが抜群だったので、一気に出て行った。相手の手応えもよかったが、しのいでくれると思った。馬を信じて乗った」。クラシック4勝を挙げている名手だが、皐月賞は初制覇。「女の子では何度か勝たせてもらった(桜花賞1勝、オークス2勝)が、牡馬はなかなか…。勝ててホッとしている」と喜びをかみしめた。

 「安心して見ていられた。お利口さんな競馬だったね」。栗田博師は蛯名の好騎乗を称えた。ボニータを初めて見たのは1歳の夏。「バランスがよくて、走りがしなやか」。第1印象からクラシックを意識させた。短距離志向の強いフジキセキ産駒だが、体形や走りから「距離は大丈夫」と確信があった。昨年11月の東京スポーツ杯2歳Sをレコードで制したが、マイル戦の朝日杯FSには見向きもせず放牧に出した。「ほどほどの間隔で使って、馬の充実度を見たかった」と師。トライアルではなく、あえて間隔の空く2月の共同通信杯から直行。「落ち着きが出た」と無理をしないローテが馬の成長を促した。

 フジキセキ産駒最後の世代にして初のクラシックV。父のデビュー戦(94年8月)は蛯名が手綱を取っていた。「まだ右回りの新潟でね。強かったよ(2着に8馬身差)」。父は4戦無敗で弥生賞を制したが、皐月賞直前に屈腱炎を発症し引退。「本当ならこの舞台に立っていた馬。その最後の産駒で、こうして勝てたことに運命的なものを感じる」。そう振り返った蛯名だが「まだ次がある」と、気持ちは既にまだ勝利のないダービーに向いている。

 86年ダービー、グランパズドリームでダイナガリバーの2着に惜敗している栗田博師にとっても悲願のタイトル。「頭を取りたいね。気性も成長しているので2Fの延長を克服してくれたら…」。指揮官の、鞍上の、父の宿願へ。ゴールの瞬間、派手なガッツポーズではなく、蛯名は左手をサラリと上げただけ。ここはあくまで通過点だ。

 ◆イスラボニータ 父フジキセキ 母イスラコジーン(母の父コジーン)牡3歳 美浦・栗田博厩舎所属 馬主・社台レースホース 生産者・北海道浦河町社台コーポレーション白老ファーム 戦績6戦5勝 総獲得賞金2億3292万1000円。

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