清水美師 心動かされた兄からの写真

[ 2014年2月7日 05:30 ]

清水美師

 今月限りで定年引退の清水美波師(69)。近郊に高崎競馬場はあったが、馬と無縁の少年時代。2歳上の兄・利章さん(元調教師)から送られた写真が心を動かした。「馬に触ったこともなかったが、写真の中の競馬場は広くて緑が鮮やか。憧れましたね」

 61年、藤本冨良厩舎(東京)で騎手デビューした兄の後を追うように同年、同厩舎で騎手見習いに。東京五輪の64年デビュー。同期の嶋田功、菅原泰夫らが華々しい活躍をする中、当人は限界も感じていた。福島障害戦の落馬事故で肋骨11本、肩甲骨骨折の重傷。「自分は騎手に向いていない。それなら裏から富士山の頂上を目指そう」。通算104勝の騎手生活に見切りをつけ、82年開業。地道に毎年2桁の勝ち星を挙げ433勝を積み上げた。

 公営・岩手から移籍後、重賞2勝のスーパーグラサード。87年根岸Sを制した砂巧者グレースシラオキ。ハイライトは10番人気イングランディーレで射止めた04年天皇賞・春。頂上を極めた一世一代の大逃走はファンの心にも深く刻み込まれた。所属の丹内を全休の月曜、ビッグレッドファーム(北海道)に連れて行くなど弟子思いでもあった。

 「調教師としては下の上、中の下だったかな。ここまでやれたのもスタッフ、牧場、馬主さんのお陰。今の管理馬で必ず勝てると言える馬はいないけど精いっぱい頑張ります」。残り3週、黙々と職務を全うする決意だ。

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2014年2月7日のニュース