シュタルケ騎手を直撃「良い騎手は違う環境・条件でも結果を出す」 

[ 2013年5月10日 19:55 ]

インタビューに答えたシュタルケ騎手

 ウマドル・桜井聖良がドイツのアンドレアシュ・シュタルケ騎手を直撃。11年に同国の騎手として欧州最高峰レースの凱旋門賞を初制覇した世界のトップジョッキーが、ロンシャン競馬場の特徴や意外な素顔を明かした。

 ――ドイツと日本競馬の違いに戸惑ったりはしましたか?例えば中山競馬場だと良馬場であればかなりのスピード決着になったりしますが。

 「どこの国でもそれぞれ何か違ったりするので、あまり戸惑いは無かったですね。どの場所でもどんなに違う環境・条件でも走らないといけない。良い騎手はその違いをしっかりつかんで結果を出します。例えば凱旋門賞が行われるフランスのロンシャン競馬場。いかにあの長い直線で焦ることなくタイミングを待ち、最後の200メートルで馬にゴーサインを出すか。様々な場所で違う条件のレースを経験すればするほど、ここぞという時に力を出せるような競争力のある騎手になると思います。自分の乗っている馬を優勝に導くこと、そしてその馬の持ち味を最大限に出してあげることが何より一番大事ですから。それにいつもと違うことで、いつまでも新鮮な気持ちで取り組めますし、挑戦することも大好きなので問題はないですね」

 ――文化も違えば競馬も大きく違いますよね?

 「そうですね。レース等の話だけでなく、馬の調教スタイルもアメリカ、日本、香港とそれぞれ独自のものがあって違います。だからこそ自国と違う新しい部分をどんどん見つけることが大事になっていくんです。なぜならそこから学んでいくことも大きいですから。それはどんな人にも言えますが騎手にだって言えることですよね」

 ――率直に言って、日本人騎手のことをどのように思っていますか?

 「素晴らしいです。10年前ぐらいからかなりレベルが高くなっていますね。僕が初めて日本で馬にまたがったのは97年なんですけど、その時と比べて若い騎手もどんどん競争力をつけていますよね」

 ――では日本競馬、競走馬のクオリティーも上がっていますか?

 「もちろん!日本競馬は規模もとても大きくて、コースや施設などのクオリティーはハイレベルです。特に日本競走馬のレベルの高さには目を見張るものがあるよ。どこにいったって結果を出せるぐらいの能力がある。エルコンドルパサーのような素晴らしい馬が多いですね。ヨーロッパの馬が日本に来て勝つことは相当難しいでしょう。それぐらい日本馬のレベルが高いんです。ここでこうやって乗れていることが本当に嬉しいですね」

 ――騎手になるきっかけはなんだったのでしょう?

 「父が騎手だったので、もう自然に自分も騎手になると考えていました。いつも父とは小さい頃からジョッキーについて色々と話していたくらいですし。他の職業に就くことは考えたこともありませんね。父からは“しっかり学校に行きなさいよ、体に気をつけるんだよ、変なことを学校で起こしちゃだめだよ”なんて言われていて(笑い)危険といつも背中合わせの仕事なので、父も心配だったみたいですね。だけどこうやって騎手でいられることは、自分にとって本当に幸せなことです、例えどんなに危険でもやりたかったことですから」

 ――さきほど、日本競馬に関してはあまり違いに問題がないとおっしゃっていましたが、文化の問題で大変なこともなかったですか?

 「それが何もなかったんですよね。日本は時間に厳しいでしょ?ドイツも同じで、10時と言われたら10時ぴったりにはちゃんとその場に居るんですよ。だけど他の国となると、遅れてきたり突然キャンセルになったり色々あるけど、日本は違う。まるで自国に居るような気分になれたんだよ。電車もバスも時間通りだし、人と安心して約束ができるしね」

 ――では日本食はどうでしたか?食事で困ることなどありましたか?

 「日本食大好きなんです!世界で一番好きなのが日本食!和牛だってラーメンだってなんだって好き。本当においしいですよね」

 ――えぇ!?じゃあもしかして日本食を作れちゃうとか?

 「作れますよ。体重が増えたらいけないからスープとかになってしまいますが、作り方もバッチリです!新鮮で脂っこくないものも作ったりしますね」

 ――もしかしてもしかして、1人で作れたりしちゃうんですか?

 「奥さんと作ったりもするけど、休日に作るとしたら基本は1人だね。1人でスーパーや市場に行って食材を選び、日本食を作って友人にもてなしたりしているよ」

 ――じゃあある意味日本人男性より日本食が作れたりするのですね(笑い)。最後に騎手の夢を教えてください!

 「まず健康でいること。そうじゃないと馬に乗ることができないからここが大前提。そしてまた日本に来て競馬に参戦し、いつか大きなレースで勝ちたいです!」

 ――ジャパンカップ?

 「いきなりハードル上げるねー(笑い)でも、頑張りたいし、いつか勝ちたいです」

 笑顔を絶やさずとても気さくなシュタルケ騎手。世界各国で騎乗している一流ジョッキーから、ここまで日本競馬を褒めてもらえていただけると、取材している私の顔までほころんでしまいました。海外の人にもっともっと日本競馬の良さをアピールしていけたらいいなぁ。(桜井 聖良)

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