【桜花賞】アユサン差し返した!デムーロ兄弟、史上初G1ワンツー

[ 2013年4月8日 06:00 ]

桜花賞はデムーロ兄弟の一騎打ち!!弟クリスチャン騎乗アユサンが兄ミルコのレッドオーヴァルを首差差し返した

 牝馬クラシック第1弾「第73回桜花賞」が7日、阪神競馬場で行われ、丸山元気騎手の落馬負傷で急きょ乗り代わったクリスチャン・デムーロ(20=イタリア)騎乗の7番人気アユサンが、兄ミルコ・デムーロ(34=同)が手綱を取るレッドオーヴァルをゴール前で差し返し、人馬ともにG1初優勝。JRA・G1で兄弟ワンツーは史上初の快挙となった。ディープインパクト産駒もワンツー(2年連続)で、桜花賞3連覇。1番人気クロフネサプライズはゴール前で後退し、4着だった。

【レース結果】

 デムーロ兄弟の火を噴くような叩き合い。しかし、そこに兄弟の情は完全に消えていた。プロ対プロ。意地と意地のぶつかり合いだった。

 残り200メートル。弟クリスチャンに鼓舞されたアユサンが先頭に立つ。外から兄ミルコと共にレッドオーヴァルが迫った。左ムチの兄。右ステッキの弟。残り100メートルで兄が前に出る。弟も諦めない。懸命に右ムチを叩き込む。残り50メートル。アユサンが差し返して前に出た。わずかに首差。人馬とも夢に見た、G1初制覇のゴールだった。

 「ビッグ・ジョブ!!」

 両手を高々と上げ、C・デムーロが叫んだ。「凄い馬だ。4角で仕掛けた時の反応が良かった。2着馬が並んできた時、負けないという気持ちがあふれ出た」。馬の状態は完璧。手塚師は「究極」と表現した。体質の弱さに泣いてきたが、チューリップ賞3着後の栗東滞在で鬼の鍛錬。ハードに攻め抜き、馬体は12キロ減。無駄肉を削いだ体が輝いた。

 11年朝日杯FS(アルフレード)以来、2度目のG1制覇。「G1はなかなか勝てないもの。ましてクラシック1冠目。丸山君がこの馬のために尽くしてくれた。彼なくしてこの勝利はなかった」。前日の負傷で無念の乗り代わり。しかし、「出来はいい。中団で折り合えば必ず最後は脚を使う」とC・デムーロにアドバイスを送った丸山を称えた。

 C・デムーロは、これが全世界を通じて初のG1制覇。親日家の兄に「日本の競馬は世界一」と勧められ、2年前、公営・船橋の川島正行師の支援で地方短期免許で初来日。以来、兄の背中を追いつつ、日本の競馬や人々と触れ合ってきた。「兄は僕の先生。父のような存在。ミルコを差せるなんて本当にうれしい。丸山君のためにも結果を出せて良かった」

 母国イタリアの競馬は危機的状況。国家財政の不安で競馬も賞金が大幅に減額され、開催ボイコットが相次ぐ。騎乗機会を求め、C・デムーロは世界を渡り歩く。今年も1月から2月中旬までは米国に滞在。日本では6月3日までの短期免許を取得したが、その後、どの国へ行くかも決まっていない。4日、京都の南禅寺で花見をした際、絵馬に「世界のG1をたくさん勝ちたい」とイタリア語で記した。若きイタリアンは白星に飢えていた。

 昨年と同じディープインパクト産駒のワンツー。宿命の第2ラウンドはオークス(5月19日、東京)へ。指揮官は「距離は大丈夫。左回りも合う」と2冠目を見据えた。新馬戦Vのホーム。3冠王手の快走を見せてくれるはずだ。

 ◆アユサン 父ディープインパクト 母バイザキャット(母の父ストームキャット)牝3歳 美浦・手塚厩舎所属 馬主・星野壽市氏 生産者・北海道日高町下河辺牧場 戦績5戦2勝 総獲得賞金1億4374万5000円。

 ◆クリスチャン・デムーロ 1992年7月8日、イタリア生まれの20歳。09年にイタリアで騎手免許を取得、45勝をマーク。翌10年に153勝を挙げリーディング2位。11年1月からNAR(地方競馬全国協会)短期免許を取得(船橋・川島正厩舎所属)。同2月のクイーンCでJRA初騎乗(スクランブルエッグ15着)。12年1月にJRA短期免許を取得、同29日の京都牝馬S(ドナウブルー)で重賞初制覇。7日終了現在、JRA通算30勝(重賞4勝)。兄ミルコは騎手、父ジョワンニバティスタは元騎手、姉・パメラは調教師という競馬一家。1メートル61、47キロ。

 ≪桜花賞アラカルト≫

 ☆騎手変更 出馬投票後の騎手変更による優勝はグレード制導入の84年以降初。

 ☆3連覇 ディープインパクト産駒は11年マルセリーナ、12年ジェンティルドンナに続く優勝。同一種牡馬による同一クラシック3連覇は、サンデーサイレンス産駒の03~05年皐月賞V以来6度目。

 ☆1勝馬 48年ハマカゼ、54年ヤマイチ、80年ハギノトップレディ、95年ワンダーパヒュームに続き5頭目の優勝。

 ☆関東馬 10年アパパネ以来3年ぶり27勝目。

 ☆4勝目 C・デムーロは12年京都牝馬S(ドナウブルー)、同チューリップ賞(ハナズゴール)、13年スプリングS(ロゴタイプ)に続くJRA重賞4勝目。

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