アンカツ引退…52歳「イメージ通り乗れなくなった」悔いなし37年

[ 2013年1月31日 06:00 ]

すがすがしい笑顔で引退の心境を語る安藤

 さらばアンカツ――。地方・中央で通算4464勝、JRA・G1・22勝を挙げた安藤勝己騎手(52=栗東・フリー)が30日、引退を表明した。栗東トレセンで記者会見に臨み「イメージ通り乗れなくなった。やり残したことはない」と心境を明かした。騎手の地方競馬から中央競馬への移籍という道を切り開いたパイオニアが惜しまれつつステッキを置く。

 37年間のジョッキー人生に悔いはなし。安藤はすがすがしい表情でテレビカメラ6台がズラッと並んだ会見に出席。「引退を決めました。あす(31日)をもって免許を返上します」と切り出し、決断に至った理由をストレートに伝えた。

 「体調は問題ないけど年のせいか関節が硬くなって馬とうまくコンタクトを取れなくなった。(レースで)ポジションを取りにいくと以前のように折り合えなかったりした。そうなると馬に負担をかけてしまう。イメージ通り乗れなくなった」

 その言葉通り近年は騎乗数をセーブし、体調面を考慮しながら一戦一戦全力騎乗を心がけてきた。それでも05年に681回だった騎乗数が昨年はわずか153回となり、年間14勝と勝ち鞍が激減。昨年は思うように体重が落ちず減量にも苦しむようになり、騎乗しない週も増加してしまった。結局パドトロワに騎乗した昨年11月24日の京阪杯15着がラストライドになった。

 「全く寂しくないと言ったらウソになるけど、やり残したことはない。JRAに来ることができて、これだけ勝たせてもらって自分の中では満足しています」

 76年に笠松でデビューして通算3299勝をマーク。中央移籍前のオグリキャップの主戦を務め、地方交流元年と言われた95年春には笠松所属のライデンリーダーとのコンビで中央の4歳牝馬特別を制した。だが本番の桜花賞は1番人気4着。「自分に芝の経験があれば、また違っていたかも」と悔しさをかみしめた。その一方で大舞台の華やかさに憧れ、中央への思いが一気に高まった。

 01年のJRA騎手試験は不合格となったが、要項が改定(過去5年でJRAで年間20勝以上2回の騎手は1次免除)された翌年に合格。03年3月に“JRAのアンカツ”として新たな一歩を踏み出した。その月末にいきなりビリーヴで高松宮記念勝ち。04年はキングカメハメハに騎乗してダービー制覇など数多くのタイトルを手にした。

 現在では、地方のトップジョッキーだった岩田、内田らがJRA移籍を果たし普通のように大活躍しているが、当時は移籍に大きな壁があった。それを最初にぶち破って道をつくったのが安藤。野球界で言えば95年に近鉄から米大リーグ・ドジャースに移籍してその後数々の記録を残した野茂英雄氏のような存在だ。

 引退後の活動については全く白紙。「夢のようだった」と振り返る合格発表から約10年。完全燃焼した「生涯一ジョッキー」がターフに別れを告げた。

 ◆安藤 勝己(あんどう・かつみ)1960年(昭35)3月28日生まれ、愛知県出身の52歳。76年に笠松で騎手デビュー。通算3299勝を挙げ、2003年にJRA移籍。JRA通算6593戦1111勝(笠松在籍時代も含む、うち重賞81勝)、地方54勝。G1は04年日本ダービー(キングカメハメハ)、08年有馬記念(ダイワスカーレット)など22勝。

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