【スプリンターズS】サンダー 札幌“激流”経験で末脚に磨き

[ 2012年9月26日 06:00 ]

展開がハマれば一発があるスプリングサンダー

 秋のG1開幕を告げる「第46回スプリンターズS」。連覇を狙うカレンチャンを筆頭に、国内外から集まった快速自慢の陰で、静かに爪を研ぐのが5歳牝馬スプリングサンダー。周到な策略と我慢強い鍛錬で、数々の大レースを物にしてきた昆貢師(54)が送り込む刺客。一撃必殺の稲妻差しが大舞台でさく裂するか。

 クロフネ産駒の牝馬と言えば、連覇を狙うカレンチャンが真っ先に思い浮かぶのは当然。だが、もう1頭、魅惑のカミソリ娘がエントリーしている。昆師が「びっくりするくらい調子がいい」と豪語するスプリングサンダーだ。

 指揮官がまず挙げたのが、20日の1週前追い。栗東坂路を4F50秒4の1番時計で駆け抜けた。「調教で動くタイプではないし、あんな時計で走ったのを見たことがない」と師。この日の2位はダッシャーゴーゴーの51秒4。同馬を含め51秒台をマークした馬も5頭しかおらず、突出した時計だ。「びっしり追っていなかったし余裕があった。決して時計の出る馬場ではなかったし、具合が相当いい証拠」と胸を張る。

 CBC賞、キーンランドCの近2走はいずれもレコード決着。着順こそ2、5着だが、末脚の切れを示す上がりタイム(3F)は33秒8、33秒6。共にメンバー中最速だ。左回り、坂のある長い直線、重馬場の中京と、右の小回り、平たん、良馬場の札幌。正反対とも言える条件で、後方待機から追い込んで勝ち馬に迫った。2戦共に、先行馬が高速馬場を利して押し切る流れ。「展開に恵まれたわけじゃなく、地力で差して来ている。伸び続ける持久力が付いてきた」と師は話す。

 特に評価したのは前走のキーンランドC。「中山のG1の前に、小回りの激流を経験させておきたかった。スピード負けしなかったし内容も上々」と振り返る。激流必至のG1舞台を見据えた戦略的な札幌遠征。「今回は先行馬が多いし、前がやり合ってくれれば」と経験を生かしての切れ味勝負に自信をのぞかせる。重賞未勝利と戦績は見劣るが「それなりのメンバーといい競馬をしてきた」と気にしていない。

 ディープスカイ、ローレルゲレイロ、ヒルノダムール。決して良血とは言えない小牧場の生産馬を鍛え上げ、G1タイトルを手にしてきた昆師。「人気がないから気楽な立場」と結んだが、柔和な表情が、かえって不気味に映る。

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