【天皇賞・春】まんまと万馬券!びっくりビートV

[ 2012年4月30日 06:00 ]

<天皇賞・春>Vゴールにビートブラック鞍上・石橋脩は歓喜のガッツポーズ

 「第145回天皇賞・春」が29日、京都競馬場で行われた。14番人気のビートブラックが4角で後続を引き離したまま先頭に立つと、そのまま押し切り優勝した。断然人気を背負ったオルフェーヴルは直線伸びを欠き11着と大敗。単勝はレースの最高払い戻し金を更新する1万5960円。2着トーセンジョーダン、3着ウインバリアシオンと続いて3連単配当は145万2520円の大波乱となった。

 勝つにはこれしかなかった。早めスパートのビートブラックが京都初勝利、重賞初制覇で単勝万馬券の激勝V。ゴールの瞬間、石橋脩は雄叫びとともに左拳を握り締めた。ジョッキー界屈指のイケメンは「まだ実感がない」と長いまつげをしばたたかせる。これがG1初制覇の28歳。作戦は大胆不敵だった。

 「何頭かで引き離していって、それで後ろが構えてくれれば…と。自分が思い切って出て行けば、何かがついてくるんじゃないかと思っていた」

 理想は高速馬場を利しての前残りだった。スタート後、押してハナへ。そこからゴールデンハインドとの逃走劇が始まった。2頭で後続を引き離し、ゴーサインを出したのは残り1000メートルの地点。「バテたら謝ろう」とスパートした。

 その時、スタンドで中村師は表情を曇らせていた。「ちょっと行き過ぎじゃないか?」。だが、その心配をよそに後続は何も来ない。直線半ばで大勢は決した。16年ぶりのG1制覇にトレーナーは喜びを爆発させた。

 「直線は早くゴールが来ないか、と。長かったね。欲しかった1番を引いたので運があるとは思っていた。まさか勝つとは…」

 登録の時点で鞍上は空白だった。最後は前田オーナーが「任せる」と中村師に全権委任。「一生懸命やってくれそう」とのイメージで指名した。石橋脩はジャガーメイルの香港遠征に同行するなど、探求心旺盛で真面目。期待に応えて、ズブさを見せながら簡単にバテない馬を最後まで御し切った。

 そして作戦面もさることながら、状態の良さも勝因の1つだ。「2週前までかなわないと半分投げていた。でもどうせG1。究極の仕上げをしよう、と。今週の追い切りがもの凄い動き。思い切ってやるもんだね」と中村師は振り返る。

 理想とする「人気のない馬で強い馬を負かす」を実現したその素顔は、南海(現ソフトバンク)ホークスと真田幸村をこよなく愛する63歳。調教師会の会長も務めたベテラントレーナーは「良馬場で、レコードタイムと0秒4差。力で勝ったかな」と胸を張った。

 まだ5歳。タイトル奪取でひと皮向けた波乱の立役者が、さらに大きく羽ばたく可能性は十分だ。

 ▽ビートブラック 父ミスキャスト 母アラームコール(母の父ブライアンズタイム) 牡5歳 栗東・中村厩舎所属 馬主・前田幸治氏 生産者・北海道新冠町ノースヒルズマネジメント 戦績28戦6勝 総獲得賞金3億291万7000円。

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