【日本選手権】福島に光!成田“復興ダービー王”

[ 2012年3月5日 06:00 ]

<日本選手権>初優勝を果たし、カップを掲げる成田。右は2着の山崎、左は3着の園田

 G1「東日本大震災被災地支援・第65回日本選手権競輪」は4日、熊本競輪場で決勝が行われた。山崎のまくりに乗った成田和也(33=福島・88期)が直線鋭く伸びて優勝。賞金6400万円(副賞含む)とダービー王の称号を獲得した。成田のG1優勝は昨年5月のSSシリーズ以来で2回目。2着は山崎で2車単(9)―(1)3250円(13番人気)の決着。人気の深谷知広はまくり不発の5着に終わった。

 G1の中でも最高峰に位置するダービー。そんな大一番を迎えても成田は冷静だった。「任せていたし山崎が持ち味を出してグランドスラムを獲ってほしい」。同県、同期で仲良しの山崎の大記録が懸かる。「しっかり援護したい」という思いだけで臨んでいた。

 号砲と同時に飛び出し、山崎を前に迎え入れたのも援護役に徹した作戦の1つ。最終3コーナーから山崎がまくった時に「外は間に合わない」と瞬時に判断。内に鋭く切り込み“滑走路”と呼ばれる日本一長い直線を真っ先に駆け抜けた。

 「実感がない…。山崎が獲るものと思っていた」。レース終了後に胴上げされても普段と変わらない表情。「(県立須賀川)高校の時から一緒に走り、競輪学校でも一緒だった山崎と喜べれば」。その山崎と抱き合った時、ようやく満面の笑みを浮かべた。

 表彰式後の会見では言葉を詰まらせるシーンも。東日本大震災以降の1年を振り返った時だ。「福島には苦しんでる方々がたくさんいる。僕は選手としてできることをやるしかない…」。震災直後は兄の恭一(35=94期・奈良)を頼り、滋賀県に避難。その後は新潟県に生活の場を移し福島県との二重生活を続けている。かつて王国と呼ばれ、G1を勝ちまくっていた福島勢だが、震災以降は他地区に押され気味で4日制以上のG1優勝は初めて。王国復活へ大きな勝利だ。

 この優勝で2年連続のグランプリ出場が決定。「厳しいレースが続くと思うけど練習して頑張る。今の自分の力を出せるようにしたい」。自力型全盛の現在、安定感が光る追い込み型のダービー王が誕生した。

 ≪ダービー決勝VTR≫Sを決めた成田が山崎を迎え入れる。山崎―成田に小嶋―深谷―園田―鈴木―岡田―長塚―村上が続く。鐘前、鈴木が上昇開始。岡田―長塚―村上―山崎―成田―小嶋―深谷―園田が続く。BSから村上がまくるも不発。3角まくる山崎マークから成田が2センターで内に切り込み直線中を割って優勝。外を伸ばした山崎が2着。園田が最後尾から3着。深谷は8番手まくり届かず5着。

 ◆成田 和也(なりた・かずや)1979年(昭54)2月25日、福島県須賀川市生まれの33歳。中大卒。03年7月プロデビュー。通算成績は573戦128勝、2着116回。通算獲得賞金は3億7326万円。主な優勝は第6回サマーナイトフェスティバル(10年)、SSシリーズ風光る2011、第65回日本選手権(12年)。1メートル72、73キロ。血液型O。

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2012年3月5日のニュース