ウオッカ故郷消える…G1・17勝カントリー牧場閉鎖

[ 2012年2月10日 06:00 ]

07年ダービーVのウオッカと口取りに収まる谷水オーナー(左)

 また1つ名門牧場の灯が消える。ウオッカやタニノギムレットのオーナーとして知られる谷水雄三氏(72=タニミズ企画会長)が9日、栗東トレセンで会見し、北海道日高郡新ひだか町静内に所有するカントリー牧場の閉鎖を発表した。丸47年でG1・17勝を挙げた栄光の歴史に幕を閉じる。

 ダービー馬4頭(タニノハローモア、タニノムーティエ、タニノギムレット、ウオッカ)の故郷が消える。報道陣の前に現れた谷水オーナーは静かな口調で決意を伝えた。

 「長年やってきたカントリー牧場を閉鎖させていただきます」

 動機として「健康に自信が持てなくなり、モチベーションを保つのが難しくなった」と説明した。そして意外にも、名牝の存在も決断の一因だったと明かした。「ウオッカが(一昨年)3月に引退してアイルランドへ行きまして、その直後にカントリー牧場の場長と相談しました。最高の時にやめたいな、と」。オーナーブリーダーとしての一番の思い出も「ウオッカの7冠制覇」だった。この達成感も大きな引き金になったようだ。

 所有するカントリー牧場(繁殖部門)の土地、建物と現1歳馬、および15頭の繁殖牝馬は岡田スタッドに売却、譲渡された。15頭の中にはウオッカの母タニノシスター、ビッグウィークの母タニノジャドールも含まれている。岡田スタッドはマツリダゴッホ、スマートファルコンのG1馬を生産しており、代表の岡田牧雄氏はマイネル&コスモ軍団の総帥として知られる岡田繁幸氏の実弟。また、育成部門の牧場は千代田牧場に売却、譲渡される。

 ただ、生産部門からは撤退するが馬主事業は継続する。「明け2歳を含めて30頭を所有している。ゆっくり楽しみたい」。そして「何をおいてもウオッカ」と強調した。アイルランドのアガ・カーンスタッドで繁殖生活を送っているウオッカは引き続き所有。この秋には、第1子(父シーザスターズ、角居厩舎に預託予定)が来日予定だ。そして現在、ウオッカは同じシーザスターズの第2子を受胎中。この春も同じ父の種付けを予定しているが「いずれも日本に逆輸入というか、日本の競馬で使わせていただきたい」と谷水オーナーは明言した。

 カントリー牧場の名前は消える。だが、あの黄、水色タスキの勝負服はまだ消えない。名牝の子たちがバトンをつないでいく。

 ▼武豊 タニノギムレットでダービー、ウオッカで天皇賞・秋を勝たせてもらった。デビュー当時からお世話になっている名門牧場ですから寂しい。

 ▼松田国師 開業当初から理解のあるオーナーで感謝しています。オーナーとして末永く競馬を楽しんでいただきたい。これからも一緒に仕事をしたい。

 ▼角居師 先日、今後の所有馬の処遇について説明に来られました。ウオッカの第1子を任されるのであれば光栄です。

 ▽カントリー牧場 創業者は谷水信夫氏。ゴルフ場経営を主業とするタニミズ企画の代表で、中央競馬の馬主でもあった。北海道静内に土地を購入し、繁殖と育成をスタート。独自のハードトレーニングで馬を鍛え抜き、開業間もない68年にマーチス(馬主は大久保常吉氏)が皐月賞を、ダービーをタニノハローモアが制した。さらには70年にタニノムーティエが皐月賞、ダービーの2冠を達成。関東馬アローエクスプレスとの対決がファンを沸かせた。信夫氏の長男・雄三氏に引き継がれてからは、タニノチカラが73年天皇賞・秋、74年有馬記念を制覇。時代が平成に移るとタニノギムレット、ウオッカと2頭のダービー馬が誕生。父子2代のダービー・オーナーブリーダーの称号を手にした。そして、10年菊花賞をビッグウィークが優勝、3冠オーナーブリーダーとなった。

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