【有馬記念】前田氏、アーネストリーで“蜂の一刺し”

[ 2011年12月23日 06:00 ]

本番を前に胸の内を語ったアーネストリーの馬主・前田氏

 有馬記念出走馬のオーナーにたっぷり語ってもらおう。前田幸治氏(62)はノースヒルズマネジメント代表でアーネストリーの馬主。社会貢献にも熱心な名物オーナーで、今年は例年にも増して素晴らしい活躍を見せている。

 前田オーナー(ノースヒルズ名義含む)は個人馬主として抜きん出た成績だ。今年のJRA重賞8勝、さらに地方交流重賞を含むと13勝に跳ね上がる。その象徴がトランセンドとアーネストリーの両G1馬。フェブラリーS、南部杯、JCダートと砂のG1を総ナメにしたトランセンド。ドバイワールドCでは2着に逃げ粘り感動の日本馬ワンツー劇に貢献した。一方のアーネストリーは宝塚記念を6番人気ながら横綱相撲で制しG1初タイトル奪取。今年の有馬記念を勝てば同一年度の春秋グランプリ制覇の偉業となる。

 さて、今年の有馬記念。オーナーブリーダーである前田オーナーの存在意義は大きい。なぜか?社台グループは生産馬(社台ファーム、ノーザンファーム、白老ファーム)が出走馬14頭中10頭。“社台の運動会”と評されるほどだ。質量の分厚い壁に挑む対抗陣営はぜひとも必要だ。

 「私は反でも、非でもなくむしろ“親”社台。(ノーザンファーム代表の)吉田勝己さんには牧場の開場時に指導してもらったこともある」

 のっけから肩透かしを食らったが「VS」の意図を理解する前田オーナーの言葉に熱がこもるのに時間はかからなかった。

 「社台グループは繁殖牝馬の数で規模が違う。勝負にならない。打倒社台、などの気持ちはありません。ただどうです?社台グループの馬が多く出走して、重賞を次から次に勝つならファンは競馬に飽きませんか」

 競馬人気を考えた場合の大局的な見地で警鐘を鳴らすのだ。さらにこうも続けた。「このままでは競馬界は第二の相撲界になるのではないのか。相撲界の衰退は三役以上の5割が外国人力士だということが影響している。競馬も昨今は外国人ジョッキーを優遇するように乗せている。私は日本の生産馬は日本人ジョッキーにこだわっている。競馬もファンに飽きられないようにすることが大事。社台グループ一色とならぬように、私どもは当然、日高の生産者も一丸となって頑張らなければなりません」

 一極集中でなく二極、あるいは多極化。競馬界の未来を考えて前田オーナーは力を込める。今回の有馬記念はクラブ馬主のサンデーレーシングだけでもタレントぞろい。女王ブエナビスタ、3冠馬オルフェーヴル、復権誓うローズキングダム、良血ルーラーシップと目がくらむ布陣だ。この牙城に対してノースヒルズ生産馬のアーネストリーが、蜂の一刺しを見舞うか。「4番人気くらいかな?ちょうどいい。有馬記念の舞台はアーネストリーにとってはコーナー、コーナーで息が入る。イメージは4コーナー好位か、もしくは先頭」。前田オーナーは、その先の攻防はあえて胸にしまったが、宝塚記念同様に、ゴールまで押し切るシーンが脳裏に描かれている。

 ◆前田 幸治(まえだ・こうじ)1949年(昭24)2月23日、奈良県生まれの62歳。オーナーブリーダーとして有名で北海道と鳥取県・大山の牧場「ノースヒルズ」の代表。本業は民間および官公庁の大型プラントの設計、保守、運転維持管理など総合的な技術請負を業務内容とするアイテック株式会社の代表取締役。

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2011年12月23日のニュース