【菊花賞】「セイウン」の志もって全力仕上げ

[ 2009年10月23日 06:00 ]

 【仕上げ人の菊模様】21日の追い切り後、気持ちが高ぶることなく、馬房でくつろぐセイウンワンダーを見て、三津谷直樹助手は感心した。「実にいい。今まではいつもカリカリしていたのに、うそのように落ち着いている」

 変身の予兆は前走・神戸新聞杯からあった。スタンドからレースを見たが、走り方が変わったように見えた。「格好良く走っているし、推進力も出た。体に切れが出て、フォームにもグッと迫力があった」。差し馬のイメージが強かったが、先団で構えたのも収穫。2400メートルも難なくこなした。早熟とみられたこともあった2歳チャンプだが、ひと夏越しての成長は大きかった。
 生まれは帯広だが、育ちは函館。夏競馬を地元の競馬場に見に行って、運命が決まった。「当時はオグリキャップを筆頭にした競馬ブーム。スタンドの大歓声、やまない拍手を、テレビではなく生で聞きたいと感じた」。行動は早かった。高校へは行かず、育成牧場から競馬学校へ。夢に向けて、回り道はしなかった。
 朝日杯FSが初G1制覇。JRA賞の表彰式にも出席し「いい経験だったが、何か場違いな気もして」と照れた。ダービーでは、あこがれだった手拍子をダイレクトに聞いた。「いつもの競馬とは明らかに違う。感動した。自分は幸せ者だと馬に感謝した。この馬に教えてもらったことは大きい」。愛馬の首筋をなでながら語った。
 今度は馬に恩返しする番。全力の仕上げを施した。「本当にいい。楽しみはある」。休み明けで明らかに太めだった弥生賞、極悪馬場のダービーを除けば、3着を外したことがない安定株だ。「まだ底を見せていない。充実しているし、このままいけば前走並みの走りはできる」。今度は表彰台で拍手を独り占めしたいと、三津谷助手は思い描いていた。
 ▼三津谷 直樹(みつや・なおき)1975年(昭50)7月28日、北海道生まれの34歳。中学卒業後、8年の育成牧場勤務を経て競馬学校へ。00年領家厩舎入り。過去にカイシュウマックス(3勝、京王杯2歳S4着)を担当。

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2009年10月23日のニュース