障害練習中まさか…馬に蹴られ蛯名信広師死亡

[ 2009年4月4日 06:00 ]

蛯名信広調教師

 茨城県稲敷郡美浦(みほ)村にある日本中央競馬会(JRA)の美浦トレーニングセンターで3日午前6時35分ごろ、同トレセン所属の蛯名信広(えびな・のぶひろ)調教師(56)が管理馬に胸を蹴られ死亡した。JRAによると、記録が残っている期間では現役の調教師が調教中の事故で死亡したのは初めてのケースだという。

 春競馬のクラシックシーズンを目前に控え、中央競馬の現役調教師が競走馬に蹴られて死亡するというショッキングが事故が起こった。
 茨城県警稲敷署によると、蛯名師は美浦トレセン内の北馬場にある角馬場(コース調教に出る前の準備運動を行う馬場)で管理する3歳牡馬の障害練習に立ち会っていたという。
 地面に置いた丸太をまたがせる初期調教を行うため、馬の後ろ側に回って動くように促したが馬がちゅうちょしたため、手にしていた引き綱で叩いた。その際、馬が暴れて後ずさりして、後肢で胸部を蹴られたようだ。
 午前6時40分に出動要請を受けた救急車が現場に到着した際には、すでに心肺停止の状態だった。トレセン近くの美浦中央病院に緊急搬送されたが、意識が戻ることはなく午前9時50分に死亡が確認された。右胸部打撲による心肺停止とみられている。
 蛯名師は千葉県出身で、JRAの蛯名正義騎手は遠い親せきにあたる。騎手候補生を経て74年3月に騎手デビュー。「白い逃亡者」と称されたホワイトフォンテンで75年の毎日王冠を逃げ切るなど重賞は6勝。通算284勝を挙げた。93年に騎手を引退して調教師に転身。昨年までに153勝を挙げていたが、今年は未勝利。きょう4日の中山競馬に2頭の管理馬を送り出し、初勝利を目指していた矢先のアクシデントだった。
 葬儀は親族のみの密葬で行われ、後日「お別れの会」を開く予定。

 ▼過去の死亡事故 JRAによると、美浦、栗東トレセン内で調教中の調教助手、厩務員の死亡事故は88年以降で11件起きているという。また地方競馬では04年6月7日、千葉県船橋競馬場の厩舎地区で函館喜弘調教師(64)が午後運動中の馬に蹴られ、外傷性心破裂のため死亡した。

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2009年4月4日のニュース