デムーロの脚本通り!?波乱のヒーロー!!/JC

[ 2008年12月1日 06:00 ]

<JC>ウィニングランの途中でスクリーンヒーローにキスするミルコ・デムーロ騎手

 急成長スクリーンが世界制圧。秋の競馬の祭典「第28回ジャパンC」が10万大観衆が見守る東京競馬場で行われ、前走・アルゼンチン共和国杯で重賞初Vを飾ったばかりの9番人気スクリーンヒーローが直線で鋭く伸び、G1初挑戦で優勝の快挙。3月開業の鹿戸雄一師(46)は騎手時代を通じて、G1初制覇。1番人気に推されたディープスカイは2着、2番人気ウオッカは3着に終わった。

 残り200メートル。壮絶な叩き合いの果ては10万大観衆も仰天の結末が待っていた。内でウオッカVSマツリダゴッホ。その外をスクリーンヒーローとディープスカイが馬体を並べて飛んできた。大歓声が一瞬静寂に変わった50メートル。前にグイッと出たのはなんとスクリーンヒーローだ。ダービー馬3頭を従え、ディープの追撃も半馬身こらえてG1初戴冠。その瞬間、初コンビのデムーロの右手が高々と上がった。
 「超、気持ちいい~。トレーナー(鹿戸雄師)からは馬を信じて乗ってくれと…。うん、マツリダゴッホの調子が良さそうだから、ずっとあの馬をマークしたんだ。こんなレベルの高い舞台で参加できるだけでもハッピーなのに…。ジャパンC優勝は初めて。ダービー(03年ネオユニヴァース)の時とも違った感激だよ」。日本でもおなじみの陽気なイタリアンは慣れ親しんだ日本語もまじえ、まくし立てた。
 誰よりも驚いたのは、3月に開業したばかりの鹿戸雄師本人だろう。2月に定年引退した矢野進師から引き継ぎ、8月支笏湖特別(札幌)の1000万勝ちから一気に頂点へ駆け上がった。15回挑戦した騎手時代を含め、初のG1優勝。共同会見の同師は夢心地の表情だった。「このような華やかな場所にいることが信じられない。矢野進先生の応援、藤沢和雄先生とのご縁、そしてオーナーの吉田照哉代表。多くの方の応援があって、ここまで来られた。横山典君、武幸君、蛯名君。この馬に乗ってくれたみんなが大きいところを獲れると褒めてくれたんだが…。僕自身は来春の天皇賞あたりかなと。想像以上に早く成長してくれたね」
 騎手時代、346勝。派手なスポットライトが当たることは少なかったが、調教師転身を決断した後は藤沢和厩舎のもとで必死に学んだ。骨折で戦線を離脱したスクリーンは夏の札幌戦までじっくり休養を取り、最適な長距離戦のレースを選び抜いた。開業直後とは思えないち密な戦略が同馬を栄光へと導いたのだ。
 脇役から主役へ。有馬記念(12月28日、中山)では一転、挑戦者を迎え撃つ。「使うたびに強くなるし、馬もどんどん良くなっている。これで強い馬ということ証明できた。体調を確認して有馬記念になるでしょう。海外挑戦!?来年は行ってみたいですね」。グラスワンダーとの父子グランプリ制覇。そして世界へ…。この先、果てしない夢が広がっている。

 ▼ミルコ・デムーロ 1979年(昭54)1月11日、イタリア生まれの29歳。日本での初騎乗は99年12月4日で、同日に初勝利。JRA通算194勝。03年にネオユニヴァースで外国人騎手として初めて日本ダービーを制覇した。今秋は11月29日~12月28日までの短期免許の交付を受けており、身元引き受け調教師は大久保龍師。

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2008年12月1日のニュース