MBS大吉洋平アナウンサーの「温泉書き流し」

高級旅館とは対照的な、街に根付くひなびた浴場もこの地を彩る一つです 静岡県熱海市・熱海駅前温泉浴場

[ 2022年2月16日 05:30 ]

内湯ひとつのシンプルな造りこそが魅力の熱海駅前温泉浴場
Photo By 提供写真

 どうも匂う時があります。鼻ではなく、五感で感じる気配のようなもの。初めて訪れる場所なのに、何となくこの辺りを探れば年季が入った湯治場にでもたどり着けるのでは、という勘。熱海駅周辺には、そんな期待に満ちた香気が漂っていました。

 日本3大温泉の一つ、熱海温泉。その歴史は古く、徳川家康はこの名湯を愛するあまり、江戸城まで湯を運ばせていたというから驚きです。

 番組の取材後に駅界隈(かいわい)を歩いていた時のこと。引き寄せられるようにやって来たのが熱海駅前温泉浴場でした。コンビニやカラオケが並ぶにぎやかな駅前から少し南東へ。周辺の様子が一変し、古びた銭湯らしき施設が。受付には手書きの案内とせっけんの自販機。脱衣所に貼られた色あせた紙には入浴者の心得が。時代が巻き戻されていく感覚に心が躍ります。

 内湯ひとつのシンプルな造り。70度を超える源泉に加水のみのぜいたくなかけ流し。湯冷めしにくい塩化物泉と、皮膚の脂分を洗い流す硫酸塩泉の特徴を持つ泉質が肌を癒やします。やっぱり。自分の嗅覚ににやり。

 文豪が名作を残し、長きにわたり、政界や財界の重鎮を魅了してきた熱海。しかし高級旅館とは対照的な、街に根付くひなびた浴場もまたこの地を彩る一つです。コロナ禍を乗り越えて、またあの街の薫りに身を任せたいと思うのでした。

 ◆熱海駅前温泉浴場 静岡県熱海市田原本町8の16。(電)0557(81)3417。定休日は水曜で営業時間は午後2時~9時。料金は大人500円、小学生200円、幼児100円。

 ◇大吉 洋平(おおよし・ようへい)1985年(昭60)8月23日、兵庫県生まれの36歳。甲南大卒。2008年にMBS入社。119年4月から情報番組「ミント!」MC。現在「よんチャンTV」ニュース担当。

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