轟悠 必死さが生んだ名キャラクター

[ 2016年11月27日 17:00 ]

初共演となる宙組トップ娘役・実咲凜音(左)との2ショットが客席のため息を誘う轟悠
Photo By スポニチ

 兵庫・宝塚バウホールで上演中のミュージカル「双頭の鷲」(12月3日まで。9~15日=神奈川芸術劇場)は、専科スター轟悠の圧倒的な存在感で見る者をぐいぐい引き込む力作。宙組のトップ娘役・実咲凜音演じる王妃への憧れ、憎しみ、愛情が複雑に絡み合いクライマックスへとなだれ込む。

 同作はハプスブルク家皇妃・エリザベートの暗殺にヒントを得てジャン・コクトーが書き上げた戯曲で映画化や何度も舞台化されている名作。ミュージカル「エリザベート」の初演時に暗殺者・ルキーニを衝撃的に演じた轟と、つい先日まで同作のヒロインを演じた実咲のタッグとあって、轟も「これも何かのご縁ですね」と一言。ただ当時のことは「ほとんど記憶にないんです。あれから何度も何度も再演され…。私、初演のメンバーで良かった~」と笑った。

 轟の代表作と言えば、真っ先に「風と共に去りぬ」のレット・バトラーが思い浮かぶが、ルキーニも間違いなく轟がつくり上げた名キャラクターだ。「そうやっていろいろ代表作だと言ってもらえるけれど、それぞれに手を抜かず一生懸命やってきた結果。その都度、その都度必死で、それは今もそうだし、稽古場でだってむちゃくちゃ緊張してますよ。“自分はできる”と言い聞かせたり坂本九さんの“上を向いて歩こう”を口ずさんでみたり」と、意外な側面を明かした。後輩の誰もが「お手本」とする轟は「下級生の必死な姿勢が刺激」と自らを奮い立たせる。その相互作用が宝塚の伝統を支えている。(土谷 美樹)

 ◆轟 悠(とどろき・ゆう)8月11日、熊本県生まれ。人吉市立第一中を経て85年初舞台。月組に配属され88年、雪組に。96年の「エリザベート」初演時に、暗殺者ルキーニを熱演するなど存在感あふれる役作りで舞台を彩り、97年「真夜中のゴースト」でトップスターに。02年専科に入り翌年劇団理事に。身長1メートル68。愛称「イシサン」。

続きを表示

この記事のフォト

バックナンバー

もっと見る