雪組・望海風斗(上)苦労した「盛岡弁」に心かき立てられ

[ 2019年6月29日 14:56 ]

「壬生義士伝」の原作、台本に「心が震えた」と話す望海風斗
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 兵庫・宝塚大劇場で上演中の雪組公演「壬生義士伝」(7月8日まで。東京宝塚劇場は7月26日~9月1日)で新選組隊士・吉村貫一郎を熱演しているトップスター・望海風斗。その細やかな演技に、超満員の客席からはあちこちですすり泣く声が漏れる。

 原作は浅田次郎氏の同名小説。盛岡・南部藩の下級武士が、貧困から抜け出すため愛する家族を置いて脱藩し新選組に加わるも、やがて時代の波にのみ込まれていく姿を描く。テレビでは渡辺謙、映画では中井貴一が演じたが、宝塚ではまた違った側面が発揮され「日本物の雪組」「芝居の雪組」と称されてきた伝統を改めて思わせる舞台に仕上がった。

 その望海は、小説から最初に受けたインスピレーションを大事に演じ続けているという。「時代背景は江戸時代だけれど、今の時代にも通じるものがあると思います。私も自分の父親のことを思ったし、原作を読んでただただ心が震えた」

 苦労したのは「盛岡弁」。その響きから受ける朴訥(ぼくとつ)な印象が、大事な要素でもあるため「最初は難しかったけれど、方言をしゃべっているだけでも自分の心がかき立てられて“うわーっ”ときてしまう」と心の内を明かした。

 豊かな歌唱力を生かし、前回の大劇場公演では憧れでもあった大作「ファントム」を成功させた望海。「あの作品で何を得たか、というよりは自分にはまだまだ知らないモノがいっぱいあるんだということが分かった」と、浮ついたところはまるでない。大きな経験を経て、さらに大きくなった望海が大劇場で躍動している。(土谷 美樹)
 
 ◇望海 風斗(のぞみ・ふうと)10月19日生まれ、横浜市出身。法政大学女子高を経て03年初舞台。花組配属。09年「太王四神記」で新人公演初主演。12年「Victorian Jazz」でバウホール初主演。14年、雪組に組替えし17年7月トップ就任。身長1メートル69。愛称「だいもん」。

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