竹中功のナニワ新報
Vol.34「コロナに負けへんで!」本を読もう!

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さてさて、この夏も「三密主義」は継続された方が良いようだ。梅雨も開ければ真夏がやって来るのは間違いないのだが、昨年とは様子が違ってきた。マスク着用は必須となっている。
あの3、4月のマスク不足は何だったんだろう。やっと安い物が手に入るようになったと思ったら、今度は「夏用」「冷感」「涼しい」「水着素材」とかの宣伝文句が並んでいる。その分、また高額商品になるようだ。
新型コロナウイルスで生活の様子が変えられてしまったが、この先は、改めて自分や家族が生き抜くために、自分自身のルールにのっとり、律して生きて行かねばならないようだ。
この2カ月以上、リモートワークや自宅待機の命令があり、出社はしばらく見合わせたというのがあって、自宅にこもる時間が増え、子供やペットが甘えすぎて困るなどの話も聞いた。私も自宅にずっといる生活に慣れ、部屋の中で出来ることをいっぱい考えたにも関わらず、どれも中途半端になってしまった。同じような人も多いのではないだろうか。
かくいう私は「なまった体をストレッチ、うまく行けばダイエット!」「撮りだめたビデオを見る」「Youtubeで英語の勉強」「料理を上手になる」などの目標はことごとく「失敗」に終わった。
そこで無理せずに自分の時間を有効に使うということで、最近は本棚の本を読み直している。ということで今回はみなさんに読書のすすめ。それも私の本である。
実は私は5年前に吉本興業を退社したのだが、それまで35年間にわたって、裏方を務めていた。入社早々「広報室」を立ち上げ、「マンスリーよしもと」という雑誌の編集長になり、その後すぐに、「よしもとNSC」という芸人養成所を立ち上げた。まずこれが入社から1年間に任された仕事だ。その後は全日本制覇や海外進出、デジタル化への波に乗るなど変わりゆく吉本興業において爆走!爆走の連続だった。
実は1981年入社早々、当時の会長に習ったことは「芸人は商品や!」だった。その意味も分からず1週間たった。そんなことを言われた同期入社の5人は「やはり人身売買の会社か?」「やばい(今で言う反社)会社か?」「いま辞めたらやり直しがきくかも?」などと会社の実体を理解できずにいたものだ。そして次に現れた常務がそれを噛み砕いて教えてくれた。「芸人は商品だ。よく磨いて高く売れ!」ということだったのだ。
「商品」というのは「芸人を人ではなく物として扱え」という意味ではなく「人間という大切な商品だから、大事に扱って、よく磨いてやって、値打ちある物にしろ!」ということだったのである。
私はその日から、芸人やタレントのどこをどう磨けばいいのか、どんなアドバイスをすればいいのか、どんな仕事にチャレンジさせればいいのかを毎日毎日考えた。
また広報マンとしては、芸人の事件や不祥事の際、いつも一緒になって謝罪していた。芸人によるバーでの暴行事件、芸人がサイドビジネスで経営するレストランで食中毒発生、ロケ先の寺院でお尻を出して地元警察に拘束など数々の場面で対応させてもらった。特に2011年、島田紳助さんの引退に関しては反社との付き合いが問題になったこともあり、ニュースの大きさも超ド級で在職中で一番記憶に残った会見になった。
そんな中、昨年、特殊詐欺グループとの間で行った闇営業が発覚し、カラテカ入江慎也は契約解除。雨上がり決死隊・宮迫博之とロンドンブーツ1号2号の田村亮らベテランとその他若手が謹慎などの処分を受けた。紳助さんの反社との関係が問題視され、引退という道を選ばざるを得なくなって8年。彼の思いは現役の芸人にとって学びにはなっていなかったということだ。その後、芸人側の「世間に対して謝罪をしたい」という思いと、会社側の「会見はさせない」というスタンスが食い違い、両者が対立関係になってしまった。
そもそも昨年7月20日に宮迫と亮が開いた会見は、反社が開催したパーティーに参加してしまい、金銭を受け取っていたことに関しての謝罪が目的だったはずだが、会見はいつの間にか会社の悪口のオンパレードになっていた。またそれを受けて2日後に開かれた社長の会見も、的外れに終わった。それを見聞きしていたダウンタウンの松本人志はついに「吉本はいつから『芸人ファースト』ではなくなったのか?」と苦言を呈し、トップとの会談を持った。また同時期、明石家さんまも芸人としての声を届けにトップとの会談を持った。
今回はこれらのことを第1章として書きはじめた。その名も「吉本興業史」(角川新書)という歴史書である。吉本興業は明治45年(1912年)創業の会社だから今年で108年ほどの歴史になる。その歴史をコンパクトにまとめた本だ。もちろん正史としての事実は押さえてあるが、私自身の興味によって強弱は付けてある。闇社会との付き合いや血で血を洗う芸人の引き抜き合戦などにも触れてある。
第1章の見出しは「“ファミリー”の崩壊」で、会社側が使う「ファミリー」という言葉の捉え方と芸人側の「ファミリー」の捉え方が違い、コミュニケーションが取れていないのではないか、という疑問を解きほぐしてみた。
例えば「普通、男は肉体労働、女はお茶でもくんでおけ!」と聞いて、今の時代、違和感のない人はいないだろう。その人の「普通」と他人の「普通」は同じものではないからだ。
今回の闇営業問題に関して、守るべき芸人を守りきれていない関係が明らかになってしまった。そこには役員と芸人とが使う「ファミリー」の解釈にズレが生じていたのだ。それぞれが相手に対して思いやりを持って接してると言いながら、その中身が違うのだから話が上手くいくわけがない。
マネジャーの数1000人に対し、所属芸人の数6000人でバランスが取れていないのが原因だとか言う人もいるが、ここは数の論理だけではない。実体はと言えばコミュニケーション能力のズレである。単純に芸人が掟を破ったのだから罰せられるというような簡単なものではなく、芸人とマネジャーは一心同体、1枚の紙で言えば裏表の関係なのである。
ここを整理して眺めてみることからこの本は始まる。そのズレを元に戻すことでまた吉本興業は軌道に乗り直せると論じた。新型コロナウイルスとも付き合いながら、吉本興業はどこに向かってくのか? そのヒントが100年の歴史から読み取れると考えて書かれたものである。是非、読んでください。
「吉本興業史」
目次
第一章 “ファミリー”の崩壊
第二章 吉本創業と躍進の歴史
第三章 戦時をくぐり抜けて
第四章 大衆に笑いを提供する使命
第五章 笑える百年企業の未来
角川新書 定価(税別)900円 発売中
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