竹中功のナニワ新報
Vol.31 「コロナに負けへんで!」 なにわのアイデア大将!

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大阪の天神橋筋3丁目にある鉄板焼屋「べろべろばあ」の大将の白尾克己くんとは付き合いが長い。もともとはテレビやラジオの番組の構成作家で、私が吉本興業の若手社員だった頃、ダウンタウンの2人が東京進出寸前まで精を出していた毎日放送の「4時ですよ~だ」で一緒にさせてもらって以来の付き合いだ。
放送作家の重鎮、新野新さんのお弟子さんだったので、今も店には放送や演芸、演劇関係のお客さんも多い。ビフォー・コロナの時代、私がカウンターに1人で飲んでいると、入ってくる知り合いのお客さんにあいさつ。言うてる間に2階から降りてきてトイレに行く別の知り合いにあいさつというぐらいで、1人で飲みに行っても多くの知り合いに会えて飽きない店だった。
それが今では営業時間の変更を余儀なくされて、売り上げはランチ・タイムも半分以下、夜は8割以上のダウンだという。そんなピンチの中、さすがの元構成作家、行動が早い。パッと思い付いたら、ガッと動きはじめていた。
実は関西の放送作家は、東京の作家のようにパソコンを使って企画書を作り、テレビ局に番組企画を提案するのではなく、ほとんどが口立てで進められる。
「この新コーナー企画、あの芸人がパァーって行ったら、ガガって作って、ポポーンとなって、見てる人もギューンってなりますねん」という調子で企画を通してしまう人も多いのだ。企画力だけではなく行動力が伴わないと仕事が回ってこないのだ。
そこで白尾くん、実は3月初旬、大阪市内のライブハウスで新型コロナウイルスに感染されたことが発表されるやいなや「お客さんへの食の提供」というテーマで頭を回転させ、テイクアウト対応を本気で準備しはじめたのだ。当然、何をするかと言うと、メニューのことではなく、彼のやったことはテイクアウト用の容器の手配だった。早々に周りの店もテイクアウトをやり出し、容器が足りなくなる日が来るということを予想したからだそうだ。
現実的にはもうその頃から団体の予約キャンセルが続出。そこで奥さんと2人で着々と計画を進め、4月6日には準備万端整え、「コロナウイルス終息までの間、あなたの『食事・家飲み』のお手伝い!」をキャッチフレーズに「ザ・テイクアウト」をスタートさせた。
プッシュ商品は、店の人気メニューである「キーマカレー」や「牛タン入りガーリックライス」に始まり、私も大好物の「ジャークチキン」そしてお好み焼きや焼きそばなどの定番の物となった。また「家飲み」のニーズも増えると予想され、おつまみセット3品選んで500円というコースもあみ出した。燻製うずら卵、もやしナムル、新生姜の豚肉巻きなど10品以上から選ぶことができる。
ただこんなことだけでは「アイデア大将」とは呼べない。このコラムで紹介させてもらえるのは、なんとドライブスルーのサービスも始めてしまったのだ。
アイデアの元は韓国やアメリカで開始されていたドライブスルーのPCR検査である。彼も関わっている「中之島まつり」や「天神祭」の中止もあり、凹んでいるところに「緊急事態宣言」発令が出たので、「これはもうあかんわ」ではなく、「ここから行くで!」とスピード感をもって「食品」の提供をすることになった。
とは言え、天神橋筋商店街に面した店の前は車の進入も走行禁止だ。だから店の前で食品を手渡す事はできない。そこで考えたのが天神橋筋沿いで車が一旦停止しやすい場所に白尾くんが走って配達することだった。自宅の近所のスーパーに出かけるのもはばかられる中、サッと車で乗り付けてもらい、サッと受け渡す。現金、クレジットカード不要のキャッシュレス対応も進められているとのこと。その場でスマホからピピッと支払いも済ませるというものだ。
テイクアウトに加え、ドライブスルーも徐々に利用されるようになってきたと思ったら、昭和ながらの、お母さんが鍋を持ってきて「白尾くん、家族4人分のカレーちょうだい」という方もおられるそうだ。
今の気持ちを聞くと、もちろん公的な機関からの援助金も欲しいし、無金利でしばらくの期間の貸付でもしてほしいところだが「お金をください!」「助けてください!」だけでは商売人とは言えないので、もっと最大限の知恵も使って、生き延びたいと話していた。
目下、転勤で大阪を離れたお客さんのリクエストもあり、近々、全国に、自慢の品々を通信販売で届けることも可能になるそうだ。もちろん、そのための仕組み作りや役所からの認証など、今までの商売には不要だったことも多いが、変えられるところを変えて生き抜きたいというのが思いだ。「コロナに負けへんで!」。
◆牛タンと創作鉄板焼きのお店「べろべろばあ」大阪市北区天神橋3の4の15、(電)06(6353)2334、公式ホームページberoberobar.com
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