竹中功のナニワ新報

VOL.25 人生は先のことをほとんど考えなくても無問題!

[ 2019年3月17日 12:00 ]

謝罪が「問題解決、信頼再構築への第一歩」という竹中氏
Photo By スポニチ

 裏方として芸人や番組やイベントを作ったり、芸人と一緒に頭を下げて謝罪したりして、35年ほどお世話になった吉本興業を4年前の夏に突然退社させてもらった。毎日、考えて考えて仕事をして、サラリーマン生活を送っていたものだが、ふと「考えること」を止めて「感じること」と出合った時、組織から去って、自分が自分のマネジメントをすることを決めることができた。一言で言えば先のことを考えるという行為を止めたと言うことなんだが…。

 その後、まずは思い付きでニューヨークのハーレムに移り住んでみた。ブラック・カルチャーに興味があったからだ。観光ではなく3カ月間、住民になってきた。英語は今も駄目だが、コミュニケーション力は確実に身につけられた。とりあえず、誰とでも仲良くなるにはハグすることだ。No Hug,No Lifeとでも言おうか。

 帰国後は、気楽に声を掛けてくれたベンチャー系企業「ミクル株式会社」のメンバーになってみたのも、とても楽しかった。入社した団体には会社やオフィスも会議もない、ミーティングは月に一度。それもメンバーがどこに住んでいるかも分からないので、会議の事前にメールが来て「日本時間の何月何日何時にパソコンで繋がっていてください」といったネット会議のみ。海外に住んでいる者もいるのでこうなったのだ。それで十分にやっていけてるし、しっかり稼いでいる会社だ。

 次の会社「株式会社ラシック」には広報官として入社した。そこは地域活性・地方創生を掲げており、現実は東京に社長と社員は数人。あとの100人以上の社員はみな鳥取に住んで働いている。広い家や自然に囲まれ、満員電車に乗ることもなく、家族や友人と近い距離で仕事を楽しんでいる。長期休暇制度も取り入れられている。ここも完全に「人力」が素晴らしい。

 吉本興業とは違った働き方の人たちに随分と出会ったわけだ。「働き方2.0」ではないが、どっかの誰かに押し付けられる前に、組織や働く者がそれを自ら構築している会社だってあるのだ。
 そんな経験をしたものだから、ボクも負けていられない。流れに逆らわず、自然の波に溺れないようにということで「謝罪の名人」と友人からレッテルを貼られ、勢いに乗って2016年11月に「よい謝罪 仕事の危機を乗り切るための謝る技術」(日経BP社刊)で作家デビューさせてもらった。もう57歳になっていた。

 それまでモノを書く勉強をしたことはなかったが、書きたいものが頭の中に揃ったということで、書き上げたのがその書籍だ。その本が出て2年半が経ち、世の中ではますます「謝罪」が増えた。どこかのエライさんが頭を下げている姿を見ない日はない。「みなさん頭のいい、地位の高い人なのに…」と心配ばかりしてしまう。

 大学のアメフト悪質タックルから、政治家や大学教授、警察官の不祥事。アイドルの飲酒信号無視ひき逃げ、男性歌謡グループ歌手の暴力借金問題。大手自動車メーカーの会長逮捕で社長謝罪やらで「大謝罪時代」の真っ只中だと言える。

 「謝罪」の専門家から見て言いたいことは、みなさん「謝罪がゴール」だと思っているようだ。私に言わせれば「問題解決、信頼再構築への第一歩」の道具の一つが「謝罪」であると言いたいのだ。何らかの理由によって加害者と被害者の関係になったわけだから、「謝罪」は必要なんだが、「謝罪」すればおしまいではないのだ。ここは2人やそれぞれの関係が修復された後の「ゴール」の姿を設定し、そこにたどり着くための行為の一つに「謝罪」があると言える。

 ボクはそのことを「イカリ(怒り)を逆さまのリカイ(理解)に変えよう。それをなし得てくれるのが謝罪だ」と呼んでいる。
 昨今、インターネットの即効力を背景に「炎上騒ぎ」の発生数は年間2000とも3000件とも言われてる。記者会見で一件落着、事態が収束するかというと、さにあらず。至らぬ点が指摘されて更なる「炎上」を招いたり、問題が一層こじれて「謝罪劇場の第二幕」が始まってしまうことが少なくない。この時にお辞儀の角度は何度で、頭を何秒下げればよいかなど、本を読んでも間に合わない。普段から鍛えておかねばならないのが「謝罪力」だ。

 企業や団体では「防災訓練」で言うと「火災や地震訓練」だけではなく、不祥事という有事を前に「謝罪訓練」が必要な時代になったと言える。実はそれは家庭内でも同じことが言える。浮気や不倫、夫婦喧嘩などの有事を前に「訓練」しておけば問題解決にもなるし、準備次第では「謝罪」をしなくいても済むという「危機管理」のプロになれるとも言える。そういうことを説いた本がこの「謝罪力」だ。

 「謝罪力 仕事でも家庭でも『問題解決』に役立つ本」(日経BP社刊)1500円(+消費税)は絶賛発売中。

続きを表示

バックナンバー

もっと見る