365日 あの頃ヒット曲ランキング 9月

【1993年9月】島唄/沖縄と無縁だったTHE BOOM きっかけはひめゆり

[ 2011年9月9日 06:00 ]

 ★93年9月ランキング★
1 go for it!/ドリームズ・カム・トゥルー
2 もう少し あと少し…/ZARD
3 No.1/槇原敬之
4 島唄/THE BOOM
5 エロティカ・セブン/サザンオールスターズ
6 夏の日の1993/class
7 真夏の夜の夢/松任谷由実
8 PARADISE/TOSHI
9 Sons and Daughters~それより僕が伝えたいのは/CHAGE&ASKA
10 咲き誇れ美しさよ/Wink
注目江ノ島/Z団
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【島唄/THE BOOM】

 当初、沖縄限定でリリースされた「島唄」を作詞作曲したのは、「THE BOOM」のボーカル宮沢和史。沖縄ではなく、対照的に海がない山梨県甲府市の出身だった。東京・原宿のホコ天出身の4人組バンドが、沖縄とかかわるきっかれになったのは、90年。宮沢へのカセットテープのプレゼントだった。

 知人からもらったのは沖縄民謡全集。ちゃんと聴いたのは初めてだった宮沢だが、すぐに魅せられ独特な琉球音階を生かした曲を新作アルバムに取り入れることを決めた。その後、ジャケットの撮影のために初めて沖縄を訪問。すっかり沖縄ファンになった宮沢は、沖縄の風土や歴史にも興味を抱くようになった。

 91年に訪ねたのは、糸満市のひめゆり平和記念館。太平洋戦争末期、沖縄での地上戦で日本軍に奉仕し、最後は多くの女学生が悲劇的な最期を迎えたその生きた証をとどめておく、沖縄にとって忘れてはならない記憶の場所で、宮沢はひめゆり生き残りの女性に話を聞いた。

 どれも耳をふさぎたくなるような悲惨で、救いのない、衝撃的すぎる話ばかりだった。同時に、自分が戦争について、沖縄について無知だったことを恥じた。

 東京に戻ると、思いのたけをぶつけて、一心不乱に曲を書いた。ひめゆり学徒のために、つらい話を聞かせてくれた女性のために、戦争で還らぬ命となった人を忘れないために、鎮魂の思いを込めた。ただそれだけだった。

 それが「島唄」だった。アルバムに収録され、これを聞いた沖縄の泡盛メーカーがCMソングに使いたいといって快諾。評判になり、沖縄限定でCDを発売した。

 これが話題となり、「島唄」の全国発売が決定した。宮沢は「ヒットさせたいために作ったのではない」と最後まで難色を示したという。それでも沖縄県民だけでなく、日本中の津々浦々の人々の心にしみわたった曲は93年だけで81万枚をセールス。以後、ロングセラーとなり、ゆうに100万枚を突破した。

 「もはや自分だけの歌ではない」と宮沢。アルゼンチンをはじめ、世界10カ国以上でカバーされている、世界の名曲となった。

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