菊水丸店主 珍宝堂

「僭越であります…」君が代独唱辞退した2002年日韓W杯

[ 2018年7月18日 11:52 ]

日本―チュニジア ( 2002年6月14日    長居陸上競技場 )

君が代独唱をお断りした私菊水丸、日本―チュニジア戦は他紙からの依頼で観戦記を書いたのでした
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 サッカー・ワールドカップがようやく終わりますと、何やらホッとする気持ちになるのです。それは、今を去ること16年、日韓共催W杯での日本VSチュニジア戦が大阪・長居陸上競技場で行われることが決定した直後にさかのぼります。

 当時の吉本興業の重役K氏が珍しく満面の笑顔を浮かべて「内緒にしておいてほしいが、大手広告代理店より、長居でのW杯で君が代独唱の依頼がきたので引き受けました」と仰る。私は即座に「有り難いことですが、誠に僭越(せんえつ)であります。ご辞退します」と申し上げたのです。

 思想信条ではなく、河内音頭を歌っての失敗ならば、自分の実力はこれまでか…と諦めもつきますが、本業以外の大役ゆえに、極度の緊張状態で頭の中が真っ白になることを恐れたのです。

 すると「私がもらったゴールドシートはどうなるんや!もう配ってしもたがな!!」とK氏。これには驚きました。君が代独唱者には、食事と飲み物が用意されるゴールドシートが進呈されるらしく、心の中で「それ、ホンマは私のものやがな…」と呟いた次第です。一般紙には「菊水丸 君が代独唱を辞退」と書かれ、いまだに私のウィキペディアにもてん末が記されています。

 さて、2002年6月14日はどうしていたのか?辞退騒動も一段落して、他紙に頼まれて長居競技場で観戦記を書いていたのです。君が代は代役を立てずに演奏のみとなり「ご起立ください」のアナウンスと共に私も立ち上がり、気がつくと声高らかに歌っていました。周囲からは「あんた、ここで歌うのなら、何で断ったんや?」と不思議そうに質問されたことを、4年に一度、W杯が開催されると思い出すのです。(河内家菊水丸)

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