ききみみ 音楽ハンター

【いきものがかり】デビュー曲秘話、神奈川描いた歌詞 大阪で誕生

[ 2016年5月16日 05:30 ]

10周年を迎える、いきものがかりの(左から)水野良樹、吉岡聖恵、山下穂尊
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 連載4回目にして初の拡大版に、デビュー10周年の人気バンド「いきものがかり」が登場! 今や誰もが知る国民的グループが、5年半ぶりに大阪でキャンペーンを行うということでメンバーを直撃し、メディアにはあまり語られてこなかった“大阪話”を聞いた。

 名前は知らずとも、♪ありがとうって伝えたくて--といえば年配の方もピンとくるはず。NHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」(2010年前期)の主題歌「ありがとう」を担当し、12年ロンドン五輪の同局テーマ曲「風が吹いている」もそう。地元・神奈川で路上ライブをしていたが、この10年で輝かしいほどに飛躍。そんな3人がアマチュア時代に県外で初めてライブをしたのが大阪だった。

 デビュー直前の05年10月、大阪・ミナミ一帯で展開される若手の登竜門のような音楽イベント「MINAMI WHEEL」に参加した。会場はアメリカ村の小さなライブハウス。初のアウェーに戸惑いながらステージに立つと、ボーカル吉岡聖恵(32)がMCの途中で言葉に詰まった。すると客席の男性から、「それからどした!?」と助け船。「地元ではありえないほど観客参加型。知らないバンドにも優しいな…と感激した」という。

 この来阪時には名曲も誕生した。レコード会社が育成期間としたデビュー1年前から第1弾シングル制作に励んだが、どれもボツに。ようやく曲は完成したが、歌詞は30~40回書き直した。デビュー曲「SAKURA」を作詞・作曲したリーダーでギターの水野良樹(33)は、「歌詞が完成したのが、このライブのリハーサルの日。会場近くの喫茶店に呼び出されて書き直したのをよく覚えている」と明かした。「オシャレなカフェで、僕とディレクターだけがげっそりした顔をしていた」と苦笑い。小田急線など神奈川の情景を描いた曲は、意外にも大阪で誕生していた。

 ことし3月には節目のベストアルバム「超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~」を発売した。老若男女に好まれるキャッチーな曲やストレートに響く歌詞。その音楽性について問うと、「私たちは尖った事が似合わない」(吉岡)、「最新鋭を行くとか、アウトローを決めるキャラじゃない。格好つけず、奇をてらわず。それしかできないし、誇りを持ってやりたい」(水野)、「高校時代に作った曲と最近作った曲を並べて聴くと、ブレずにやって来られたと改めて思う」(ギター、ハーモニカの山下穂尊)。

 彼らの音楽はよく“J―POPの王道”と評される。ベタな事を避けたがるアーティストも多い中、その潔さは気持ちいい。誰の耳にも馴染む良いメロディーと言葉を生み続ける才能は貴重。彼らの人気に、上質でベタなポップを聴きたい人は多いんだ、と実感する。11年目からも陽の当たる音楽道のド真ん中を、堂々と大股で歩んで行って欲しい。(萩原 可奈)

 ◆いきものがかり リーダーでギターの水野良樹(みずの・よしき=1982年12月17日、神奈川県出身)、ボーカルの吉岡聖恵(よしおか・きよえ=84年2月29日、同県出身)、ギターとハーモニカの山下穂尊(やました・ほたか=82年8月27日、同県出身)の3人組。2006年3月15日、シングル「SAKURA」でデビュー。08~15年、8年連続でNHK紅白歌合戦に出場中。

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