「どうする家康」三方ヶ原逸話“回収”団子売りの老婆　番組CPも唸る作劇　柴田理恵の起用「愛らしさ」も

大河ドラマ「どうする家康」第19話。徳川家康の三方ヶ原敗走“後日譚”に笑い合う団子売りの老婆（柴田理恵・中央）と浜松の民（C）NHK
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　嵐の松本潤（39）が主演を務めるNHK大河ドラマ「どうする家康」（日曜後8・00）は今月21日、第19回が放送され、主人公・徳川家康が武田信玄に惨敗した「三方ヶ原の戦い」の“焼き味噌＆食い逃げ”逸話が前回から1週間後に“後日譚”として描かれた。制作統括の磯智明チーフ・プロデューサー（CP）にSNS上で話題を集めた作劇の舞台裏、女優の柴田理恵（64）を団子売りの老婆役に起用した理由を聞いた。

　＜※以下、ネタバレ有＞

　「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなどのヒット作を生み続ける古沢良太氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ62作目。弱小国・三河の主は、いかにして戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのか。江戸幕府初代将軍を単独主役にした大河は1983年「徳川家康」以来、実に40年ぶり。令和版にアップデートした新たな家康像を描く。古沢氏は大河脚本初挑戦。松本は大河初主演となる。

　「三河一向一揆」「伊賀越え」と並び、徳川家康の“3大危機”に数えられる「三方ヶ原の戦い」。第17回「三方ヶ原合戦」（5月7日）第18回「真・三方ヶ原合戦」（5月14日）と2週にわたったが、SNS注目のエピソードは登場しなかった。しかし、第19回「お手付きしてどうする！」終盤、浜松の民の“噂話”として語られた。

　徳川家康（松本潤）の“浮気騒動”も一件落着。酒井忠次（左衛門尉）（大森南朋）は「殿、気を緩めるゆとりなどありませんぞ。この遠江の民は、殿を馬鹿にして楽しんでおります」と家康を諌めた。

　浜松の町、茶店。団子売りの老婆（柴田理恵）は「三方ヶ原から負けて逃げ帰る時に、うちの団子、全部食っちまってな。だから私ゃ、『まー、銭払えー！』って追っ掛けてって、銭ふんだくってやったんだわ。ありゃ家康だったに違いないわ」と客と一緒に笑い合う。客の1人は「家康はな、信玄が恐ろしくて、馬上で糞漏らして。焼き味噌だって誤魔化したんだと」。老婆は「そういや、臭かった、臭かった」と笑いが絶えない。

　「三方ヶ原の戦い」には家康が敗走の途中、茶店で小豆餅を食い逃げし、茶屋の老婆が家康を追い掛けて銭を取ったというエピソードがあり、浜松市の地名に「小豆餅」「銭取」が残る。

　また、恐怖のあまり脱糞し、家臣に“焼き味噌”だと言い訳したという逸話も。大敗の戒めとして、肖像画「しかみ像」（徳川家康三方ヶ原戦役画像）を描かせたと伝わる。

　インターネット上には「柴田理恵の有効的な使い方w逸話の出どころか！当時、遠江の民にとって家康は侵略者なので、そうだろうなぁと納得でした」「『瀬名がお万を木に縛り付けて折檻』→お万の自作自演、『銭取・焼き味噌』→民の流言飛語という形で見事に逸話を回収する一方、この時代の正室の権利・役割という史実背景は正確にぶちこみ、さらに『女の戦』というワードで瀬名の今後の布石を打つ…何この全方位に目配りの効いた脚本」「柴田理恵さんが団子屋として登場したのが2カ月前（第11回、3月19日）。2カ月かけて団子屋の意味を回収しましたね。団子屋を通じ、三方ヶ原の逸話を逸話として、強く明るく生きる庶民の姿を描き、登場回数は少ないながら浜松編のもう一つの面を回してくれたと思う」などの声が続出。その作劇と演出、柴田の起用が反響を呼んだ。

　磯CPは「家康が岡崎から浜松に居城を移した第15回（4月23日）の終盤でも、家康が歓迎されていない様子を描きましたが、家康にとって浜松がアウェーな場所だったことと、食い逃げの逸話から、庶民の代表としてお田鶴（関水渚）の時代から団子を売っている老婆というキャラクターを古沢さんが創作されました。三方ヶ原が終わってから1週空けて逸話を盛り込む展開も、その語り口も『そう来たか！』と今回も唸（うな）らされましたね」と明かした。

　「団子売りの老婆は出番こそ多くはないですけど、庶民の感情を代表して家康にぶつける、そして『どうする家康』の三方ヶ原の伝承パートを一手に担うという重要な役割を持っています。それらを1シーンで表現していただくとともに、一見、意地悪に映りますが、愛らしさやコメディー要素もある。これは是非とも柴田さんに、とお願いしました」

　今作は、今川家重臣・鵜殿長照役の俳優・野間口徹らトレードマークのメガネを外しての熱演がSNS上で話題となり「メガネをかけていない柴田さんも、視聴者の皆さんに新鮮に映ればいいなという思いもありました」。柴田が見事、期待に応えた。