山田裕貴 朝ドラと大河の振り幅の大きさ 「その時間を生きるということを大事に」

[ 2023年1月16日 09:00 ]

大河ドラマ「どうする家康」の家康(松本潤)と忠勝(山田裕貴)の一場面(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】NHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜後8・00)で、戦国最強武将の1人とされる本多忠勝を演じる俳優の山田裕貴(32)が役柄への思いを明かした。

 「忠勝に自分と似たものを感じます。もちろん、戦国の世を生きた忠勝には到底及ばないけれど、僕にも結構、思いの強さ、面倒くさいくらいに重くて熱いところがあります。だから、忠勝の気持ちが分かる気がするんです。全てに100%を求める。俳優をやっている以上、お芝居が刀だから、どれだけ格好いいと言われようと、お芝居がいいと言われなければ僕は1ミリもうれしくない。忠勝に近いと思います」

 15日放送の第2回で、大樹寺(岡崎市)にある徳川家の先祖代々の墓の前で切腹しようとする徳川家康(松本潤)に忠勝が言葉を投げかける場面があった。

 「あの言葉に共鳴しました。台本に書かれていなかったので、泣こうとは全く思っていなかったんですけど、自然に涙が出て止まらなくなりました。殿が泣いているシーンだったのに僕が泣いてしまって申し訳ないと思いました。あのシーンで、殿に対する忠勝の思いを感じたんです。本多家は代々、松平家に仕えてきて、殿の祖父や父を忠勝の祖父、父が守ってきた。だから、殿がそんなていたらくでは自分たちの家系が無意味になるという思いがある。殿にうらみすら覚える。これが戦国の世なのだと思いました。あの日、自分ではない自分がそこにいた気がします」

 昨年放送された連続テレビ小説「ちむどんどん」では、優柔不断な教員・石川博夫を好演した。今作での勇猛果敢な忠勝を見ると、同じ役者が演じているとは思えないほど、芝居の振り幅の大きさを感じる。

 「僕がずっと追い求めているのは、お芝居にしないことです。芝居くさいものは見れば分かります。それを全てなくしたい。本当の顔、本当の声、本当の動きで、そこに生きているように思ってもらいたい。だから、その時に出てしまったものはそのまま出してしまおうと思います。どんな役でも、その時間を生きるということを大事にしています。石川博夫にしても、愛情に対する考え方、全てを許す強さなど、共感できる面がたくさんありました」

 主君の家康を演じる松本潤への共感はこの作品の大きな力になるだろう。

 「松本さんには、僕が感じたことのないお仕事のスタイルがあります。今まで僕は、自分の動きを制限されるのが嫌で、自由に動いているところを撮ってもらう感覚でいました。でも、松本さんは正反対のスタイルで、スタッフさんの動きやカメラが撮っている方向など全て把握した上で自分のキャラクターを作り上げています。キャスト、スタッフというより、チーム全体を指揮するくらい統率力がある人だと思います。まずは殿に認めてもらうことがこの大河で重要だと思っていたんですけど、食事の席で松本さんに『裕貴に会えて良かった』と言ってもらえて、とてもエモい気分になりました。絶対に作品の力になりたい。殿の力になりたい。思いは忠勝と同じです」

 この作品で強烈な忠勝像を楽しめそうだ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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