中学生デビューから好対照な2人 敵なしで高みに到達の藤井王将 好敵手に囲まれた羽生九段

[ 2023年1月7日 05:10 ]

令和の天才VS平成の怪物 王将戦8日開幕(3)

藤井王将(左)と羽生九段
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 藤井と羽生は共に中学生で四段昇段してプロになった中学生棋士としてキャリアをスタート。だが、その後の成長曲線は好対照だ。

 学生服姿の中学2年生が62歳上の加藤一二三・九段を破った。16年のクリスマスイブに始まる、藤井のデビュー戦以降29連勝。「29連勝」は翌年の流行語大賞の選考委員特別賞に輝いた。15歳6カ月で朝日杯を制し、一般棋戦初優勝。17歳11カ月で棋聖を獲得し、初タイトル。以降も負けなしでタイトル獲得11期に達した。8日からの第1局は20歳5カ月で迎える。

 では同時期、羽生の到達地点はどうだったろうか。87年、17歳2カ月で一般棋戦・天王戦で初優勝すると89年、竜王を奪取。その19歳3カ月は当時のタイトル獲得最年少記録だ。翌年失冠すると、2期目は91年3月に決着した棋王戦。この時、ちょうど20歳5カ月になっていた。

 歴代最多99期へと急加速するのは92年竜王戦以降。全7冠のうち3冠を保持した谷川浩司竜王から竜王を奪い返し、タイトル数で逆転して3冠になった。当時22歳3カ月。11期は94年3月、23歳5カ月での到達で、藤井が3年先行していることになる。

 戦後、時代を築いたとされる棋士に大山康晴15世名人、中原誠16世名人、羽生がいる。藤井も加えていずれも5冠経験者で、それぞれ20年前後、第一人者だったがタイトル戦で盤を挟んだのは大山と中原のみ。計20シリーズ対決し、24歳下の中原の16勝4敗だった。

 羽生は、中原とのタイトル戦を実現できなかったが「羽生世代」と呼ばれるライバルはいた。佐藤康光九段(53)や森内俊之九段(52)で、佐藤は歴代7位の13期、森内は8位の12期を重ねた。

 「藤井時代」に突入した今、まだ「藤井世代」と呼ぶべき好敵手はいない。ならば、中原にとっての大山のような存在を、通算100期に挑む羽生が務められれば棋界の近未来は姿形を変えるのではないか。

 2人は大山―中原の24歳差をしのぐ32歳差。今後20回までは望めないだろう黄金対決で、勝敗を超えたどんな伝承が行われるのか。

 「盤を挟むことで考えや棋風がこれまで以上に感じられると思うし、自分もしっかり考えて、特長を出していけたら」。羽生とのタイトル戦を待望した藤井同様、棋譜に接する全ての人が、歴史の証人になる。(筒崎 嘉一)

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2023年1月7日のニュース