渡辺名人 波乱の黒星発進 前王将まさか…弟弟子・近藤七段に完敗 王将戦挑戦者決定リーグ

[ 2022年10月5日 05:29 ]

対局後、頭を抱える渡辺名人(撮影・河野 光希)
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 将棋の第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)挑戦者決定リーグは4日、東京都渋谷区の将棋会館で1局を行い、前期王将の渡辺明名人(38)=棋王との2冠=が近藤誠也七段(26)に敗れる波乱となった。近藤はリーグ3回目の挑戦で初の白星スタート。リーグは11月下旬まで行われ、勝者が来年1月開幕予定の7番勝負で藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=と対戦する。

 弟弟子の近藤に、最後は即詰みで仕留められた。「今日は内容がよくなかったですね」と振り返る渡辺の声には、いつも通りに張りがあったが、その双肩は明らかに落ちていた。前期まで王将戦3連覇を誇った強豪としては、あまりに痛い黒星発進だった。

 先手番で、選んだ戦法は角換わり早繰り銀。近藤が腰掛け銀で対抗すると、繰り出した右銀をちゅうちょなく最前線へと送り込む。一度は退却したものの、57手目▲3八飛と、攻めの大駒を3筋にずらしてアタック第2波を敢行。しかしこの積極的な決断がかえってあだとなる。

 「攻め方がよく分からなかった。(3八飛と指した)あの後があまりうまくいかなかった…」

 59手目に▲3六飛で歩を払った直後に△2八角と打ち込まれ、66手目には△4六同角成で飛車角交換を許す。この付近から攻守が入れ替わり、終盤は防戦一方で反撃の余地はほとんど失われていた。

 過去2戦2勝の相手に喫した完敗劇。感想戦では69手目▲6五同歩に代わる有力手▲4一角を検討したが「あれだけでは追いつかない」と却下するなど、結論としては「だいぶ困ってますよね」で、あっさり終了してしまった。

 藤井王将へのリターンマッチを実現させるためには、残り5局を全勝に近い星で戦い抜かねばならない。渡辺は「また改めてやっていきたいです」と巻き返しを期した。2冠王の反撃は、果たして…。

 ≪近藤七段 初の白星スタート≫渡辺同様、所司和晴七段門下の近藤は、兄弟子挑戦3度目にして初勝利。「後手番だったので手待ちの作戦。ちょっと揺さぶられる展開でうまく待ちきれるかと思ってました」と小声で明かした。疑心暗鬼のまま中終盤に差しかかったが、攻めのターンが巡ってからは終始攻勢。リーグでは初の初戦勝利に「これまで黒星先行ばかり。いいスタートが切れました」と喜んでいた。

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