里見香奈女流4冠 女性初のプロ棋士挑戦へ決意「自分がどこまでやれるのか 強い方と対局したい」

[ 2022年7月7日 05:30 ]

棋士編入試験への意気込みを語った里見香奈女流4冠
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 女性で初めて棋士編入試験を受ける里見香奈女流4冠(30)が6日、大阪・関西将棋会館で記者会見し「強い方と対局したい」と意気込みを語った。将棋のプロは棋士と女流棋士がいて制度が異なる。これまで棋士は男性しかおらず、女流トップが女性初の棋士を目指す。試験は8月以降、新人の棋士5人と対戦し、3勝すれば合格となる。

 長考は、覚悟の確認のためだった。5月27日の受験資格獲得からほぼ1カ月。申請リミットが迫る6月24日に下した受験の意思表示について「より後悔しない選択をするため、感情がどう動くのか見ていた」。持ち時間を使い切り秒読みになるまで自らを追い込むように、本心と直面しての決断と明かした。

 里見は棋士に交じった公式戦で直近の成績が10勝4敗に到達。棋士編入試験の受験資格「公式戦で10勝以上かつ勝率6割5分以上」を女性で初めて満たした。

 女性初の棋士誕生なるか。沸き立つ周囲に「注目されるのは大変うれしいのと同時に、こういうことが珍しくない社会になればいい」と語った。「歴史も違うので何とも言えないところはある」と前置きした上で「お隣の囲碁界では男女関係なく拮抗(きっこう)している印象を受ける。そういったことも刺激になっている」と明かした。

 04年、中学1年で女流2級となり11年、男女混合の奨励会編入試験で1級に合格した。13年、女性としては初めて最高位の三段に昇段し、棋士に王手をかけたがその後、体調不良による休養も経験。18年、三段リーグで対戦成績が7勝9敗となり、年齢制限で残り2局を待たずに退会が決まった。

 「奨励会に編入した頃はかなり(棋士を)意識した。今は将棋を指せることがどれだけ幸せか気づけた。純粋に大好き。強い方と対局したい」

 成長の要因として、以前は時間重視だった勉強方法の転換、AIの活用を挙げた。「自由度の高い将棋を指したいというのが勝敗に限らず、結果的によくなってきた」。振り飛車を開花させ「出雲のイナズマ」が代名詞の終盤力に磨きをかけた。

 試験は8月以降、月に1回若手棋士との対局を5局行い、3勝すれば合格となる。合格すればA級からC級2組まで5クラスある名人戦順位戦のさらに下、フリークラスへ編入される。「自分がどこまでやれるのかを重視したい。力を出し切れるような対策を練っていきたい」。迷いを断った、穏やかな表情が印象的だった。

 ◇里見 香奈(さとみ・かな)1992年(平4)3月2日生まれ、島根県出雲市出身の30歳。森鷄二・九段門下。6歳で将棋を始め、2004年に中学1年で女流プロになる。08年に初タイトル「倉敷藤花」を獲得。終盤の攻めの鋭さから「出雲のイナズマ」の異名を持つ。

 ▽将棋の棋士編入試験 編入試験は2005年に特例で実施され、アマとして活躍した瀬川晶司六段が合格して翌年、正式に制度化された。今泉健司五段、折田翔吾四段が受験、プロとなった。

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