渡辺王将 4連敗で失冠、4連覇逃す 対藤井タイトル戦8連敗で3冠から2冠に「やっぱりこの結果は残念」

[ 2022年2月13日 05:30 ]

第71期ALSOK杯王将戦第4局第2日 ( 2022年2月12日    東京都立川市・SORANO HOTEL )

熟考する渡辺王将。右は藤井竜王(撮影・西尾 大助、会津 智海) 
Photo By スポニチ

 渡辺王将は、最後は大勝負に出た。いや、出ざるを得なかった。101手目に渡辺が選択した▲9五角(第2図)。間接的に王手飛車取りを狙う大技を仕掛け、続く103手目に▲2三飛成と攻め立てる。可能な限り藤井の王に迫ったが、悲しいかな継続手がない。駒台に並ぶ桂と金の位置を整え、ほどなくして力なく駒を投じた。

 「またストレートで負けてしまったことについては…なんというか、残念というのもちょっと違うし…」。懸命に言葉を探しても見つからない。視線は空中をむなしく漂う。「そうですね…もうちょっと何とかしたかったんですけど…うーん…そうですね、そういう感じです」

 3期守った王将のタイトルを手放してしまった悔しさ以前に、開幕4連敗という冷徹な事実が渡辺の身も心も無情に凍らせていた。

 何度指してもかなわないのか。耐えがたいほどの名折れだ。藤井とのタイトル戦では一昨年の棋聖戦で1勝3敗と敗れ、復讐(ふくしゅう)を期した昨年の同戦では3連敗。すでに嫌というほど苦汁をなめさせられてきた。今回の王将戦は初の2日制。持ち時間は棋聖戦の倍となる8時間だ。一手一手にじっくりと手間暇をかけることができる。棋聖戦とは違う将棋を今7番勝負で展開できるという期待すら、無残にも打ち砕かれた。

 第1、3局は内容的に拮抗(きっこう)していた。今局も第1日終了時点では「まずまずだと思っていた」と明かす。まずまずどころか、むしろペースを握りかけていた。

 ところが「その後ちょっと、何か手が広くなったところで間違えてしまったんですか…」。徐々に圧をかけられて金縛り状態に追い込まれ、ならばと馬切りを促す89手目▲2九飛が、むしろ傷口を広げることになった。王者の背中が徐々に小さくなる。あらぬ方向に視線を落とし、腕組みをしながら弱々しく盤面を見つめる姿には悲愴(ひそう)感すら漂った。

 対藤井のタイトル戦8連敗。保持していた3冠も2冠に減った。その2冠のうち棋王戦は現在、永瀬拓矢王座(29)相手に防衛戦の真っ最中。6日の開幕戦で勝利を挙げ、好スタートを切っている。それでも「やっぱりこの結果は残念なんで…」と、最後まで言葉を継ぐことはできなかった。

 横っ面を張られるような衝撃を味わい、砂をかむ思いで臨んだ感想戦。渡辺のテンションは異様なほど低かった。こんな姿を見せるのは、この日が初めてかもしれない。

続きを表示

この記事のフォト

2022年2月13日のニュース