関口武史氏 藤井竜王の8六歩に見た攻防一体「全盤面対応型」への進化

[ 2022年1月30日 05:30 ]

第71期ALSOK杯王将戦第3局第1日 ( 2022年1月29日    栃木県大田原市「ホテル花月」 )

王将戦第3局第1日・A図
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 【関口武史 第1日のポイント】第1局に引き続き藤井は相掛かりを選択。22手目で別れを告げ渡辺が△7四飛と揺さぶりをかける。藤井が▲7七金と受けるとすぐに△8四飛と戻る。後手番の戦術で▲7八金と形を直せば再度△7四飛と寄り「千日手」が狙いとなる。

 序盤早々の千日手は避けたい藤井は▲8六歩(A図)と陣地を膨らます。先手の7七金は将来、後手から8五桂や6五桂の流れ弾に当たりやすく自陣の角の働きを悪くしているなど悪形といえる。藤井は2手得(△7四飛~8四飛の往復運動による)を生かしつつ▲8六歩~8七金という手順で陣形を整えた。

 第1局の▲8六歩は自陣角の砲台準備として攻撃主体、本局の歩突きは自陣整備と陣地拡大という守備的と、同じ▲8六歩でも意味合いが異なるのは現代将棋らしい一面だ。現代将棋は「攻めと受け」という役割が明確だった時代を経て、全ての駒の役割がスイッチバックする攻防一体の「全盤面対応型」へと進化を遂げた。

 渡辺は先手の整備に呼応して駒組みを進め、△6五歩と後手番ながら位を主張する。先手が▲9八香と上がり戦線を広げると、後手も△4四銀と強く迎撃し中央から戦端が開かれた。(スポニチ本紙観戦記者)

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