渡辺王将 逆襲へ“魔王”の指し回し、今期2度目の相掛かり 難解な構想戦突入

[ 2022年1月30日 05:30 ]

第71期ALSOK杯王将戦第3局第1日 ( 2022年1月29日    栃木県大田原市「ホテル花月」 )

<王将戦第3局第1日>渡辺王将は藤井竜王との対局で熟考する
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 連敗を止めたい渡辺明王将(37)=名人、棋王含め3冠=は藤井聡太竜王(19)=王位、叡王、棋聖含む4冠=が再び選んだ相掛かりを堂々と受け止め、難解な構想戦に持ち込んだ。盤面を挟んで細かい駆け引きが続く中、62手目を封じて第1日を終えた。

 土俵中央でがっぷり四つに組んだまま、微動だにしない。仕掛けを繰り出す細かい動きが時折見られる程度だ。封じ手の入った封筒を立会人の深浦九段に託し、自室に戻った渡辺は「中盤の入り口くらいで、だいぶ局面が複雑になってきましたか」と冷静に分析した。

 歴史的名局と高評価を受けた第1局(9、10日=静岡県掛川市)をなぞるような立ち上がり。21手目までは20日前と全く同じ棋譜が刻まれた。22手目で手を変えたのは後手の渡辺。△4二王とした先例を離れ、△9四に端歩を突く。ほぼノータイムの進行は以降、一手一手が重い神経戦へと突入する。

 「あまりやったことのない将棋になりましたね」

 藤井の29手目▲8六歩を見て30手目△7四歩を指すまで59分。43手目▲1六歩に応じる44手目△6五歩には51分。慎重に長考をかませながら最善手を繰り出し、決して隙を見せない。

 地下鉄飛車の構えをぶつけられても、慌てることなく56手目△5五歩(第1図)と、先手の中央上空に手を伸ばす。強烈なけん制球だ。銀2枚の天蓋(てんがい)に守られた自王の両側面には金を配置。最下段は一段飛車で強固にガードされている。そして相手には攻めの焦点を絞らせない。百戦錬磨の王者にふさわしい指し回し。

 王将戦では自身初の開幕連敗を喫した渡辺だが、過去のタイトル防衛戦を振り返ると26シリーズ中、なんと防衛成功は21回に上る。勝率に直すと・808。かくも優秀な数字を残している要因については本人いわく「そこ(防衛戦)に逆算して準備しているから」と単純明快だ。いつの世も記録は雄弁。0勝2敗のスコアでも挽回のオーラは漂い続けている。

 激戦の薫りがぷんぷん漂う第2日。午前9時の再開時にどんな封じ手が披露されるのか。そしてその後の構想は。「今日(29日)のうちに考えをまとめておきます」と短く結んだ王者は音もなく自室に消えた。

 ≪封じ手は≫
 ▼立会人・深浦康市九段 △9六歩。端からの反撃の場所を確立させる狙い。
 ▼副立会人・戸辺誠七段 △6四銀左。中央に厚みをつくり、▲9九飛に△5一飛などの応酬が考えられる。
 ▼記録係・斎藤優希三段 △5六歩。5筋にプレッシャーを与えつつ、相手の出方を見る。

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