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好楽、小朝、木久扇…活字の世界も乙なもの

[ 2022年1月26日 12:43 ]

「菊池寛が落語になる日」
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】落語家の著書を立て続けに読んでいる。日本テレビの長寿番組「笑点」でもおなじみ、三遊亭好楽(75)の「志ん朝、円楽、談志……いまだから語りたい昭和の落語家 楽屋話 好楽が見た名人たちの素顔」(河出書房新社)がそのうちの1冊。

 最初の師匠、八代目林家正蔵(のちの彦六)に入門してからの日々が興味深くつづられ、ほとんどが酒でのしくじりによる23回の破門、2020年に先立たれた最愛の妻・とみ子さんとの思い出、そして先輩や同輩、後輩たちにまつわる秘話も満載。ぐいぐい引き込まれた。とりわけ四天王と呼ばれた古今亭志ん朝、2人目の師匠である五代目三遊亭円楽、立川談志、そして兄弟子に当たる五代目春風亭柳朝とのそれぞれのエピソードの数々は滑稽話と人情噺が合体した世界。泣かせて笑わせて、そしてしんみりとさせてくれる。

 他にも初代林家三平、林家こん平、林家たい平(57)、九代目入船亭扇橋、九代目桂文治、五代目柳家小さん、笑福亭鶴甁…ら同業者たちとの交流がおもしろおかしく描かれていく。

 父と同じ道を歩む長男の三遊亭王楽(44)の芸名は五代目円楽が名付け親になってくれたという。王楽の本名「一夫」は八代目の正蔵が命名。その王楽の2人の息子、つまり好楽にとっては目に入れても痛くないお孫さん「理史」と「康至」は春風亭小朝(66)がゴッドファーザーだと明かす。

 好楽が所属する「五代目円楽一門会」は原則、寄席への出演がかなわないが、その人柄は落語協会、落語芸術協会、落語立川流の垣根を越えて愛されていることが手に取るように分かる1冊。好楽だけに好著!これって座布団何枚だろう?

 さて、好楽の孫の名付け親になった小朝の著書は1月11日に文藝春秋から上梓された。「菊池寛が落語になる日」で、文字通り菊池寛の短編小説をもとに創作した落語9編と、ベースになった小説を並べて紹介した意欲作だ。

 「父帰る」「恩讐の彼方に」「真珠夫人」などで知られ、芥川賞と直木賞の創設者としても知られる菊池の短編に興味引かれ、落語に仕上げて2016年から新宿の紀伊國屋ホールの高座にかけてきた。

 筆者は毎度足を運んできたが、「入れ札」、「お見舞い」(もとは「病人と健康者」)、「予感」(もとは「妻は皆知れり」)、「うばすて山」、「マスク」など、直接触れてきた9編が収録されている。コロナ禍で落語会の開催もままならない昨今だが、1月29日に新たな一編を披露するという。天国の菊池寛も楽しみにしているに違いない。

 これから読もうと思っているのが林家木久扇(84)と弟子たちが書いた「林家木久扇一門本~天下御免のお弟子たち~」(秀和システム)で、これも年明けの1月18日に発売された。木久扇に憧れて門を叩いた若者たちの青春の日々。2月12日にはヨコハマにぎわい座で出版記念落語会も開催されるという。そういえば、好楽、小朝、そして木久扇はいずれも八代目正蔵の一門。とんがりと言われた八代目の懐の深さにも改めて感じ入る。

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